トランプ氏に仕えているのは自己利益を求める人ばかり
また、トランプ10政権には共和党の次期大統領の座を狙って、トランプ政権で名乗りを上げたいとの野心を胸に、次代の大統領を目指して活躍する行動派タイプの閣僚も存在していた。
国務長官として北朝鮮との非核化交渉を強力に進展させ、トランプ大統領と金正恩委員長による3回の直接会談開催にこぎ着けることに成功したマイク・ポンペオ元国務長官や、国連大使として対ロシア、対中国のタカ派米外交を徹底的に追求して名をあげたニッキー・ヘイリー氏がこのタイプである。


いずれも自ら策を練り、積極的に動いて成果をものにしてきた人物だが、2人ともトランプ再選には共和党員として反対の姿勢を打ち出したために、トランプ2.0政権からは締め出されてしまった。
ポンペオ氏は最近、カナダのオタワで記者会見した際に、カナダを米国の51番目の州にしたがっているトランプ大統領の態度を受け流し、「カナダは自国の主権を維持すると確信している」と、カナダ国民にエールを送り、前のボスの神経を逆なでしてみせた。
一方、ヘイリー氏もテレビの政治番組の中で、「私たちはウクライナ国民の友人になる必要があり、彼らがわれわれに(支援を)懇願する態度を取らせる必要などない」と述べて、ウクライナを見捨てようと動くトランプ2.0政権を間接的に批判している。
1.0政権で活躍したこの2人がトランプ2.0政権から締め出された事実は、政権発足当初は「再び動くか」と期待された北朝鮮外交や国連外交が進展しない大きな理由となっている。マルコ・ルビオ国務長官はいまのところはトランプ氏に対して、三歩下がってボスの影を踏まないような姿勢を貫いている。さらにはトランプ氏と彼のMAGA支持者に忠誠心を見せることに必死で、ルビオ外交と呼べるような見せ場は見られない。

ちなみに2.0政権にも、ポンペオ氏やヘイリー氏のように、自らの考えで活動計画を立案し、トランプの覚えめでたいことを確認した上で、成果を得るために活躍する人物がいた。政府効率化省(DOGE)を率いてきた実業家のイーロン・マスク氏だ。

だが、派手なパフォーマンスで、時に執務室内でトランプ大統領よりも目立つ態度が「政権の和を乱す人間は排斥する」と公言してきたスージー・ワイルズ首席補佐官の不興を買い、トランプ氏には惜しまれながらも就任4カ月足らずでホワイトハウスから消えることとなった。

確かにマスク氏の言動には賛否あったが、彼の存在がなくなったことで、トランプ2.0政権を目立たせるような力のある屋台骨が一本なくなってしまった感じだ。
また、2.0政権にないもう一つの重要な要素が、1.0政権でトランプ外交を背後から支えたヘンリー・キッシンジャー国務長官のような「賢人」の存在だ。トランプ氏自身もキッシンジャー夫妻をよくホワイトハウスのパーティーに招き、彼の言うことには素直に耳を傾けたことで知られる。
だが、キッシンジャー氏がこの世を去って以降、トランプ氏に仕えるのは自己利益を求める人ばかりで、真の「賢人」は存在しなくなった。これもまた2.0政権にとっては、大きな痛手である。
