2.0政権の閣議はまるで北朝鮮政府の会合のよう

 4月29日にトランプ2.0政権がスタートして100日が過ぎたが、この4カ月余りで、トランプ1.0政権(2017年~2021年)との大きな相違が明確化してきた。

 筆者は第一次トランプ政権について、拙著『トランプVS.ハリス─アメリカ大統領選の知られざる内幕』(幻冬舎新書)の中で、トランプ1.0政権の最終段階を「重要な乗員(補佐官)たちが脱出してしまい、炎と煙を吐いて墜落しつつある航空機」に例えた。

 そして、今年1月20日に再スタートした2.0政権については、新たな航空機に変容して、再度滑走して空へ舞い上がった、と当初は考えていた。

 だが、4カ月経って分かってきたのは、実は、1月20日の就任式当日に起こったことは、トランプ1.0政権の墜落する航空機の中に国際社会ごと全員が戻っただけだった、という事実だった。墜落の速度は速まり、揺れも前回よりひどかった。

 思えば、1.0政権では米共和党のためにトランプ政権を成功させようという共和党中道派や保守本流の勢力から参加した有能な閣僚や補佐官たちが政権内にいた。自身のビジネスセンスを最大の売りにした“トランプ流”のやりたい放題には賛同しかねるが、共和党として政権を正しく運営しようという人物が、共和党保守本流の思想、行動原則を強く押し出して、政策を実行し続けた。

 そうしたメンバーの中には、国家安全保障会議のジョン・ケリー元補佐官やジョン・ボルトン元補佐官、ジェームズ・マティス国防長官らがおり、結局彼らは皆、トランプ大統領と正面からぶつかって辞任するに至った。トランプ氏には、自分の利益と評判とMAGA(米国を再び偉大に)勢力に褒められる成果しか眼中になかったからだ。

ジョン・ケリー氏(写真:AP/アフロ)
ジョン・ボルトン氏(©Mario Cantu/CSM via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)
ジェームズ・マティス氏(写真:CTK/共同通信イメージズ)

 トランプ2.0政権にはこうした「共和党の基本思想が大統領職より上位にある」と考える閣僚が一人も存在しない。閣僚選別の段階で、「トランプへの忠誠心」だけが重要なファクターとなったためだ。

 1.0政権では、閣議はそれでも皆が意見を出し合う場という雰囲気があったが、2.0政権の定例閣議ではどの閣僚も「大統領の偉大な指導力のおかげで、政策は大成功している」と、まるで北朝鮮政府の会合かと思うような甘ったるいトランプ大統領への忠誠心を明かす発言のオンパレードとなっている。

 しかも、忠誠心だけで閣僚の座を得た人物が、自分の言動を批判する省庁内の官僚については「ディープステート」のレッテルを貼ってクビにするため、国防総省やCIAなどの省庁も上手く機能していないと指摘されている。