トランプ米政権の関税措置が世界の経済やマーケットを翻弄しています。9日に発動した相互関税は直後に一部の国・地域に対して90日間の停止を発表。投資家や産業界は今後の関税政策の動向を見極めていく必要があります。トランプ大統領が描く今後のシナリオは何か。経済産業省(旧通商産業省)で対米通商交渉を務めた経験を持つ明星大学教授の細川昌彦氏に聞きました。3回に分けてお届けします。(取材日:2025年4月8日)

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株式相場が乱高下、中間選挙からすべて逆算

——世界経済がトランプ関税に翻弄されています。相互関税の発表後、世界同時株安となりましたが、トランプ大統領はこれほどのマーケットの波乱を想定していたのでしょうか。

細川昌彦・明星大学教授(以下、敬称略):本音はどう思っているのかわかりませんが、今の段階では平静を装うでしょう。

  今後の焦点は、関税政策の旗をいつ降ろすのかということです。トランプ大統領は製造業の復活を掲げて、関税政策で企業に米国内へ投資させることを狙っています。一時的な関税であれば企業は投資しないので、トランプ大統領は恒久的な関税とする旗をしばらくは下ろさないでしょう。

(編集部注:相互関税は4月9日に発動されたが、同日中に報復関税をとっていない一部の国・地域に対して90日間の停止措置が発表された。日本も含まれ、24%とされた税率は上乗せ分が凍結され、一律に適用される10%のみとなる)

トランプ大統領が相互関税を90日間一部停止にすると発表したことで、NY株は急騰した(写真:AP/アフロ)

 ただし、マーケットの暴落がどれくらい続くのか。トランプ政権はマーケットの落ち込みを大手術後の一時的な落ち込みとし、体力が回復してくれば上向くと楽観的な見込みをしていますが、トランプ大統領にとっての最重要な課題は来年2026年11月の中間選挙で勝つことです。そのため来年に入ってもマーケットが回復してこないと国内の批判が集まり、選挙に勝てません。そのため、関税の旗をいつ下すのか、逆算して見極めていく必要があります。

——中間選挙を見据えた動きがあると。