大阪・関西万博の開幕に備えた予行演習「テストラン」で、入場ゲートに並ぶ来場者。行列の影響で夢洲駅でも人が滞留した=6日午前、大阪市此花区の夢洲(写真;共同通信社)

 大阪・関西万博が4月13日、開幕する。約160カ国が参加し、10月13日までの184日間、大阪湾の人工島「夢洲」で開かれる国家イベントだが、準備段階では、会場建設費の増大、工事の大幅な遅れ、前売り券の販売不振など迷走が目立った。開幕直前のテストラン(予行演習)では無料招待された約10万人から賛否の声が上がったが、実際のところはどうなのか。

 昨年8月刊行の検証本『大阪・関西万博「失敗」の本質』(ちくま新書)の著者らが実情を掘り下げる。第3回は、ジャーナリストの木下功氏が、防災など安全面への懸念と、それを招いた維新政治の思惑を解説する。

【ほかの回の記事】
[1回目]万博は太閤秀吉に学ぶべきだった 難工事でパビリオン揃わず、メタンガスまで発生した夢洲の悪条件
[2回目]電通依存のツケを払う万博、頼みの吉本興業も背を向け「もはやどこかの地方博」との声

「並ばない万博」のはずが雑踏事故の懸念

 真新しい地下鉄駅の構内にぎっしり人が並ぶ写真を見て、懸念を覚えた。雑踏事故が起こらなければいいが……。

 大阪・関西万博の開幕を控え、4月4日から3日間開かれたテストラン(予行演習)。そこで明らかになったのは、「並ばない万博」という触れ込みを実現するのは、そう簡単ではないということだ。入場ゲートには手荷物検査の長い行列ができ、1時間以上待つ人は珍しくなかった。予約なしで入れる企業パビリオンには、3時間待ちのところもあったという。

 そして、入場ゲートのすぐそばに延伸開業してまもない大阪メトロ中央線の夢洲駅。コンコースや階段は混み合い、地上へ出る階段前の広場のような空間には、入場を制限された来場者が滞留していた。長いエスカレーターは混雑時にはリスクが高まる。

 『大阪・関西万博「失敗」の本質』を4人の共著者とともに上梓してから8カ月余り。同書で筆者は「万博と政治」をテーマに執筆し、中でも防災をはじめ安全問題を重視した。万博会場である夢洲が大阪湾を埋め立てて造成された人工島で、アクセスルート不足と軟弱地盤という極めて深刻な課題を持つ土地であるためだ。

 大規模な国際イベントを開催するには致命的とも言える土地条件の場所を強引に会場に選んだ経緯から、政治の思惑を浮かび上がらせようと試みた。その後、防災の課題は開幕を目前にした今も解決しておらず、新たに来場者輸送という課題も浮上している。アクセスルートが少ないため、大阪メトロに過大な負荷がかかるのだ。