
大阪・関西万博が4月13日、開幕する。約160カ国が参加し、10月13日までの184日間、大阪湾の人工島「夢洲」で開かれる国家イベントだが、準備段階では、会場建設費の増大、工事の大幅な遅れ、前売り券の販売不振など、迷走が目立った。開幕直前のテストラン(予行演習)では招待された約10万人から賛否の声が上がったが、実際のところはどうなのか。
昨年8月刊行の検証本『大阪・関西万博「失敗」の本質』(ちくま新書)の著者らが実情を掘り下げる。第1回は、一級建築士で建築エコノミストの森山高至氏が、会場建設が難航した理由を解説する。
【ほかの回の記事】
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本来は開幕2~3カ月前に完成のはずが
大阪・関西万博がついに始まる。海外パビリオンのうち、参加国が独自に設計するタイプAは47カ国42館ができる予定だが、4月9日のメディアデー(内覧会)で公開されたのは36カ国31館にとどまった。11館が未完成ということになるが、内覧会参加者によれば、公開されていても内装工事や展示がすべて終わっておらず、部分開業のパビリオンもあるという。
いずれにせよ、万博のメインである海外パビリオンが全部揃わないまま開幕を迎える見切り発車となりそうだ。
建物が未完成のパビリオンは、建築完了や消防の検査、内装工事や展示物の搬入・設置作業もその後に控えている。さらには、管理運営するスタッフの教育、来館者の案内や非常時の避難誘導など、一定期間のトレーニングも必要になる。
報道によれば、正式なオープニングをゴールデンウィークの頃に計画する国もあるという。つまり、どうにか開幕に間に合ったとされているパビリオンも含めて、実態は「ちょっと開幕にずれ込んだだけ」というレベルではない。本来なら、開幕の2~3カ月前には完成していなければならなかったのである。
主催者の2025年日本国際博覧会協会(万博協会)は2024年10月にすべての海外パビリオンの建設が完了し、25年1月に内装工事完了というスケジュールを立てていたが、工事は遅れに遅れた。今年2月からは昼夜三交代の24時間体制になったが、とても追いつかないまま、現状に立ち至ったというわけだ。
万博協会が正確に状況を把握し、参加国を適切にサポートしていれば、ここまで遅れることはなかったし、建設業界の有識者も散々警告し続けてきた。にもかかわらず、このような事態に陥ってしまった。
筆者はSNS、ブログ、著書、新聞や雑誌への寄稿、テレビやラジオに出演してのコメント、講演会など、あらゆるチャンネルを通じて、大阪・関西万博における建設工事上の問題点を訴えてきたが、ここで改めて解説してみたい。