
(頼藤 太希:Money&You代表取締役/マネーコンサルタント)
今回は、皆さんに3つの問いについて考えていただきたいと思います。
Q:お金がたくさんあれば幸せになれる?
ないよりはあったほうが幸せなのは間違いないでしょうが、際限なくお金を増やし続けること、つまり「富の最大化」を目指すことで幸せになるのでしょうか。
皆さんと一緒に考えたいのが、「死んだ時に一番お金持ち」は果たして幸せなのか。あの世にお金は持っていけません。
Q:お金がたくさんあれば、人生の選択肢を増やせる?
確かに、選択肢は、ないよりもたくさんある方が満足度を高められるという話もあります。しかし、その選択肢も実行しなければ、宝の持ち腐れです。
Q:お金がたくさんあれば、安心が得られる。「安心=幸せ」の側面もある?
先行き不透明な将来に対して、ある程度お金は保有しておくことは安心にもつながります。「安心=幸せ」の側面もあるでしょう。しかし、やはり過度にお金を貯め込んでいても意味がないと考えています。
なぜならば、お金は使ってこそ価値があるからです。そして使うことで、人生の幸福度を高めることができます。
ではさっそく、研究結果などのデータに基づいて、幸せとお金の関係、長続きする幸せとしない幸せ、幸福度を高めるお金の減らし方を一緒に考えていきましょう。
年収が増えると幸福度も上がる?
ダニエル・カーネマン氏らの2010年の論文には、年収が6万〜9万ドル(約900万〜1350万円)になるまでは幸福度は上昇するものの、その後は頭打ちになると示されています。つまり、幸福度は年収に比例しないのです。
この傾向は日本でも同様で、内閣府の調査によると幸福度(総合主観満足度)は世帯年収が2000万〜3000万円までならば比例して上昇するものの、それ以上に年収が上がっても幸福度は緩やかに減少していくことが示されています。
■年収と幸福度の関係
他方、カーネマンが2023年に発表した同様の研究では「年収が7.5万ドル(約1130万円)以上になっても、幸福度は伸び続ける」という結論も示されています。一見すると先の研究と矛盾するように見えますが、正確には、そもそも幸福度が低いグループでは年収が増えても幸福度は頭打ちになり、高いグループは年収と幸福度が比例するという結論です。
もともと幸福度が高い人は「お金はあればあるほど幸せ」と感じ、低い人は「お金がたくさんあっても幸せは頭打ち」と感じるということです。年収が幸福度に影響を及ぼすのも事実ですが、もとの幸福度の高さも非常に重要なのです。