税金や年金、保険などお金の仕組みは、制度が複雑でなかなか理解するのが難しいものです。しかし、知らなければ大損してしまうかもしれません。そこで、Money&You代表取締役でマネーコンサルタントの頼藤太希氏が、具体的なケースを想定し分かりやすく試算する連載「知らなきゃ大損、お金の計算」をスタートします。今回は、サラリーマンにとって大増税となる退職所得控除の見直しを取り上げます。(JBpress)
「サラリーマン増税」「無限増税」という言葉が出ているように、岸田政権は新型コロナ対策でばらまいたお金を回収しようと模索しています。「退職所得控除」「給与所得控除」「生命保険料控除」など所得税・住民税に直結する控除のニュースが多いように感じます。
中でも「退職所得控除」の見直しは厄介です。大増税になるにもかかわらず、人々の関心が薄いからです。確かに、多くの人にとって退職金をもらうのは20年、30年、40年後と先のことです。増税は、退職金をもらえる時期になってようやく実感するもので、今すぐに影響を受けるものではありません。
しかし、退職金は今もらうものではないから関係ない、と思っている方は要注意です。退職所得控除はiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)にも関係しているからです。
今回はこの退職所得控除の見直しで、いくら増税になるのかをみていきましょう。
退職金・iDeCoの税金を大きく減らせる
まず、制度をおさらいしましょう。
退職所得控除は、退職金やiDeCoの資産を一時金として受け取るときに利用できます。退職所得控除は、一時金から一定の金額を控除(差し引くこと)して、所得税や住民税の対象になる課税所得(退職所得)を減らすことができる仕組みです。
退職所得=(一時金−退職所得控除)×1/2
※勤続年数が5年以下の場合、退職所得が300万円を超えると1/2を適用できない
退職所得控除が一時金よりも多い場合には、税金はかかりません。
また、一時金が退職所得控除より多い場合には、一時金から退職所得控除の金額を引き、さらに「2分の1」をかけた金額が退職所得となります(2分の1課税)。この退職所得をもとに所定の税率をかけ、所得税や住民税の金額が算出されます。
つまり、退職所得控除によって、一時金にかかる所得税や住民税を大きく減らすことができるのです。
次に、退職所得控除額の計算方法をみてみましょう。