本稿執筆時点では、米ドル円の為替レートが1ドル=150円台に迫っています。2022年10月20日に円相場が下落し、1米ドル=150円台の円安水準となって大きなニュースになったことは記憶に新しいところですが、この時、ドル預金やドル建終身保険が飛ぶように売れていました。今回も同じように「ドル預金」「ドル建て終身保険」に注目が集まってくるでしょう。
そこで連載3回目は、ドル建て終身保険をはじめとする「貯蓄型保険」を取り上げます。「貯蓄(投資)」という性格がわかりやすいドル預金はいったん議論の外に置いておきます。
貯蓄型保険は、貯蓄(投資)の要素と保険を組み合わせているため、金融商品として複雑さが増しています。そのため、しっかりとその特徴を理解しておかないと、思わぬ損失を招いてしまうリスクがあります。「こんなはずではなかった」と後悔しないよう、実際に試算しながら貯蓄型保険が実は「お得」ではない理由を解き明かしていきます。
(頼藤 太希:Money&You代表取締役/マネーコンサルタント)
【連載】
第1回:退職所得控除の見直しで大増税!iDeCoにも影響、損しない一時金のもらい方
第2回:サラリーマン大増税の危機、もし給与所得控除が10分の1に見直されたら?
為替レートはさまざまな要因で変動しますが、ドル高円安という状況になっている主な要因は円とドルの金利差によるものです。ドル金利は5%を超える水準を維持し、年内に1回の利上げを示唆しています。
一方、円金利ですが、日銀が金融政策の現状維持を発表しているように、ほぼ0%と超低金利のままです。安全性が高く、金利の高い通貨で運用したいという需要は高いため、ドルの通貨価値が上がり、円の通貨価値が下がるということが起こります。
このように金利と為替は深い関係があることはまず覚えておいてください。
そして、ドル金利上昇および円安になると、活況を呈してくるのが、「ドル預金」「ドル建て終身保険」です。
三井住友銀行が9月25日からドルの定期預金金利を、これまで年0.01%だったものが、1カ月ものと2カ月ものは1%、3カ月ものは3.70%、6カ月ものと1年のものは5.30%と、大幅に引き上げると発表し、話題になりました。
「ドル貯金を始めなければ」と考えている方も多いと思いますが、今回はドル貯金よりも金融商品としてわかりにくいドル建て終身保険など貯蓄型保険のリスクを深掘りしていきます。
「付加保険料」「販売手数料」が高い
まずは保険の本質の確認です。
保険は、「もしも」のときにお金で困ることがないように備えておくためのものです。自動車で対人事故を起こしてしまった場合の賠償金、家が火事で焼失してしまった場合の補填、小さな子を残して亡くなってしまった後の遺族の生活を支える保障など、「貯蓄ではまかなえないお金」に備えるために保険は有効です。
保険で死亡保障に備えるならば生命保険が該当しますが、もし活用するのであれば「掛け捨て型」の保険がいいでしょう。掛け捨て型は、解約してもお金は戻ってきませんが、必要な保障を安く用意できるからです。
ただ、この解約してもお金が戻ってこないことに「もったいない」と感じてしまうのが人間の心です。