- 7月上旬には1ドル145円に達していたドル/円相場だが、断続的に140円を割り込むなど足許では円高に振れている。
- 急激な円高の原因として、米雇用統計の弱さや金融緩和の修正を示唆した日銀高官の発言が材料視されている。
- だが、足許の円高は売られ過ぎた円が買い戻されているに過ぎない。「そもそも誰が円を買うのか」という点を踏まえれば、持続的な円高は考えにくいのではないか。
(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
円高の理由は「売られ過ぎたから」に尽きる
円相場の円高・ドル安が続いている。7月13日の午前(東京時間)は断続的に139円を割り込む動きとなっており、円相場は1カ月ぶりの高値を更新している。
一連の円高の原因としては、6月の米雇用統計が市場予想以上に弱い結果に終わったこと、内田日銀副総裁が緩和修正を示唆した(と思われている)ことなどが挙げられている。
ただ、7月に入ってからの急速な円高は、基本的には「売られ過ぎたから買われている」という側面が否めない。
7月4日時点の円売り持ち高(対ドル)は2022年5月10日週以来の水準まで積み上げられていたが、2022年5月当時は25bpの利上げが50bp、75bpと加速していた上に、原油価格も急騰する地合いにあった。
金利も需給も円安に対する追い風が強まる一方という状況だったと言える。
これに対して、現在は金利も原油価格も当時とはほぼ逆の環境にある。投機筋の円売りの積み上がるペースは円安予想の立場である筆者から見ても性急さを覚えるものであった(図表①)。
【図表①】
当面は、これまで構築された投機の円売りポジションが清算されるに伴って、円高に振れるのが健全な展開だと思われる。
問題は、こうした「売られ過ぎたから買われている」という時間帯を通過した後も、円高が続くのかどうかという点だ。