- 6月15日から16日にかけて開催される日銀金融政策決定会合で、日銀が政策変更に動く可能性はそれほど高くないが、7月以降、YCCが撤廃される可能性はある。
- ただ、YCCの撤廃は、それ自体に円安抑止効果があるため、当面、この枠組みは温存されるのではないかと見ている。
- その場合、FRBやECBの利上げ停止が見えた後でないと持続的な円高圧力にならないため、YCCの撤廃はFRBやECBの利上げ停止が確実に見えてくる10〜12月期ではないか。
(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
円安抑止策としてのYCCは温存か
6月15日から16日にかけて開催される日銀金融政策決定会合については、現状維持を予想する声が大勢だ。ただ、一方で7月以降の政策変更の可能性について、金融機関から質問を受ける機会が増えている。
「次の一手」として有力視されるイールドカーブコントロール(YCC)の修正に関し、撤廃するのか、あるいは変動幅の拡大なのかという議論はあるが、いずれ円安抑止策としてYCC撤廃を活用したいであろうことを踏まえれば、当面、この枠組み温存される可能性が高いと筆者は考えている。
※イールドカーブ・コントロール(YCC):長短金利操作。長期金利と短期金利の誘導目標を操作し、イールドカーブ(利回り曲線)を適切な水準に維持すること
裏を返せば、円安相場が収束したという判断があれば、7月にでもYCC修正は可能という見方もあるが、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)の利上げ停止が読み切れない中、円安相場の収束を判断するのは容易ではない。
筆者はFRBやECBの利上げ停止が確実なものとなり、利下げ可能性の議論が浮上してくるであろう10~12月期後半、もしくは年明け1~3月期までYCCは温存されると考えている。ラフなイメージとして、今年の冬まではYCCが温存されるという見立てである。
現状、政府・日銀に残された円安抑止策は、金融政策では①YCC修正と②マイナス金利解除、通貨政策では③為替介入である。
筋論から言えば、金融政策で最善を尽くしてから通貨政策が動くことが期待されるものの、既に昨年、金融緩和を温存したまま円売り為替介入を行っているため、いきなり③為替介入という動きもタブーとは言えない。
しかし、消費者物価指数(CPI)が生鮮食品及びエネルギーを除く総合ベース(以下新型コアベース)でも4%を超える中、さすがに(円安抑止以外の意味では)形骸化した①YCC修正を温存したまま③為替介入に踏み切るのは難しいように思える。