米国のハーバード大学(Pixabayからの画像)

 毎年、年度初めの4月にはフレッシュマンにエールを送る内容にしていますが、今年は新人だけでなく、ベテランにも朗報の春となりました。

 日本経済新聞は3月29日、英科学誌「ネイチャー」の記事を引用して「米研究者、75%がトランプ政権下で国外移動検討」と報道していました。

 そこで元記事を確認してみましたが、少し日本語報道とニュアンスが違う面があるように思いました。

 これを補うところから始めてみましょう。

「若手研究者」の定義

思いやられる日本の高等学術政策

 日本語の記事は「ポスドク」が逃げ出しているものでした。一方、原文を見て見ると、米国脱出を考えているのは「若年層に顕著」という傾向で

(外国人)常勤研究者 < ポスドク < 大学院生

 という不等式が成立しており、それを元記事では細かに解説しています。実際の数字で示してみましょう。

アンケートの全体で 離米検討者1211人/総数1608人 = 75.3%

 ところが、これを「ポスドク」つまりドクターの学位を取った後の時限研究者に限ると

ポスドク離米検討者 548人/総数690人 = 79%

 と、さらに高率になります。実は 博士課程の学生だけで見ると

博士課程学生の離米検討者 255人/総数340人 = 75%

 さらに修士課程の学生では

修士課程学生の離米検討者 293人/総数350人 = 83%

 と、学年が下に行くほど、米国留学をやめ、母国や別の国に移動しようとしていることが分かります。

 これに対して、既に安定した職位(PIと言いますが)を持っている人をみてみると

外国人PIの離米検討者 663人/総数918人 = 72%

 と、依然として過半数を超え、非常に多くの「世界の頭脳」が米国離れを起こしつつある。

 これは大変な「地殻変動」である可能性があり、日本は大きなチャンスを迎えていると考える必要があるでしょう。