生成AIの普及で大混乱しつつある教育現場

目次

 今回は、最初に東京大学の社会貢献プログラム、渋谷スクランブルスクエアQWSアカデミアをご紹介しましょう。

 生成AI以降、教育をどうすべきか?甘利先生&杉原先生の「人間ならではの能力を伸ばす『遊びのススメ』」です。

 2022年11月、米オープンAIによる生成AI「ChatGPT」の公開以降、人類社会が決定的に変化した一点は、機械システムがあたかも人間が書いたかのような文章や文字列を「生成」できるようになった点でした。

 このため、文責が明らかでないメチャクチャなセンテンスがネットに横溢。毎日のように大量の「東大」が関係する「薄毛対策」「水虫薬」「ED治療」などの動画CMが流れます。

 しかし、一つとして東京大学が関わるものはありません。

「宿便がどーした」だの、「手足のしびれがこーした」だのという、医療と無関係な虚偽広告も見慣れてしまいましたが、あのようなものでもネット商法が成立している懸念が強いわけで、取り締まりの手が追い付いていないのでしょう。

 我々大学人が一番心配するのは、こうしたおかしな状況を子供たちが見慣れてしまうことです。

 合成音声は平気で漢字のおかしな読みを垂れ流し、東大生ですらそれに影響されて日本語の読みを間違って記憶しているのを見かけます。

 例えば、「こちらの方(かた)が」を誤って「こちらの方(ほう)が」と読む学生に出会い、愕然としています。

 生成AIはコンピューターのプログラムも自動生成しますので、学校での「プログラミング」授業も本質的な変更を余儀なくされています。

 しかし、日本の役所は独自のストーリーで動いており、グローバルな変化に全く対応できていません。

 それ以前に、小中高校で教える「プログラミング教育」と称するものが教育産業として自己目的化しており、高等専門学校(高専)や大学など、プロで通用する計算機プログラミングとほとんど無関係という宿痾を指摘しておく必要があるでしょう。

 東京大学が提供している分野横断的な教育プログラムのSTREAMM(Science、Technology、Reflection、Ethics、Arts、Mathematics、Musica)では、小学校低学年からプログラミング言語「Python(パイソン)」を用いた普通のプログラミングのみを教授し、お子様向けに味付けされた教材は用いません。

 これは、小学生向けのピアノ教室でお子様向けの教材を用いると、お金を出す親は喜ぶのですが、子供の能力は伸びないのと同じこと。初めからバッハやベートーヴェンなど本物だけを幼時から教える方が、結局子供が伸びるのです。

 今回の、生成AI以降、教育をどうすべきか?  甘利先生&杉原先生の「人間ならではの能力を伸ばす『遊びのススメ』」も、同じ原則で考えています。