まずあそぶことから始めよ

 まず「あそぶ」のがポイントです。

 あそぶ経験を持つことで、上記のように菅生学園の下野先生が直面されたような混乱をきれいに解決することができる。

 というのが、甘利俊一先生(東京大学名誉教授)、杉原厚吉先生(東京大学名誉教授)にご指導いただきながら、私たちがここ5年ほど取り組んできた義務教育のリニューアルで、その最中に「生成AIショック」が訪れたのでありました。

 教科書の版元である「新興出版社啓林館」のご協力を得、私が責任をもってここ3年取り組んできた結果のエッセンスを、今回は私の東大駒場のゼミ生たちによる演示なども含めて渋谷QWSで展開します。

 抽象的な概念としての「かど」「点」ではなく、まず「遊び」を通じて、生活体験のボキャブラリーの中に概念の根っこを移譲していきます。

 折り紙に限らず、進んだAR機器なども併用しますが、一番大切なのは、子供たちが自らの生活環境の中で「遊び」ながら、世界を拡大していくことです。

 実際に手で持って折り曲げ、何なら先っちょで手をつんつんしたりして体験、体感できる「非認知的な世界認識」、遊びを通じた「対象の把持」が先行します。

 そしてこの「遊び」の延長に、その子供にとってごく自然な形で「認知能力」の基礎をなす抽象的な概念を体得させていく――。

 20世紀までの子供なら、アナログ時計について、そうした経験が学齢前の幼時からおうちの中でいくらでもあり得ました。だから小学1年生に時計の文字盤を見せても、パニックを起こしたりすることはなかった。

 でも、それがない子供が大半になっている現状があります。

 幼稚園期からいたずらに「タブレット」などあてがわれ、全身を使って世界を体得する経験を奪われている特定世代の子供たちに対しては、まず全身でそれらを先に体験させ、次にその抽象に向かうという、人類史の王道を行く必要がある。

 それが私たちの考える「AI以降の義務教育」の一丁目一番地にほかなりません。

 菅生学園初等学校では、全国的にも珍しい理学部数学科出身の小学校教諭、若い小島拓海先生が勤務しておられます。

 12月20日については、特に「AIの父」甘利俊一先生ともご相談して、この小島先生に、進んだ数学の背景を念頭に、一番大切であるべき初等教育、子供たちが数理思想と出会う1の1をどう考えるか、キーノート・スピーチ、基調講演として小学校の現実を報告してもらうことになりました。

 生成AI以降、教育をどうすべきか?甘利先生&杉原先生の「人間ならではの能力を伸ばす『遊びのススメ』」は入場無料ですが、予定人数に達したら事務局が登録は締め切ってしまうとのことです。

 ただ、動画配信などでもご覧いただけると思いますので、ご興味のある方はぜひアクセスしていただけたらと思います。

 子供たちには平易な表現で話しますが、考え方の基盤をなす考え方については、大人向けの簡潔な表現で、この連載でも触れていけたらと思っています。