
日本銀行は3月18〜19日の金融政策決定会合で、「0.5%程度」とする政策金利を据え置いた。「次の利上げ」が金融市場の焦点となる中、引き続き日銀は国内外の環境を考慮に入れながらメッセージを発していくことになる。こうした「市場との対話」について考慮すべき論点とは何か。元日銀の神津多可思・日本証券アナリスト協会専務理事が解説する。(JBpress編集部)
(神津 多可思:日本証券アナリスト協会専務理事)
中央銀行と金融市場との「円滑な対話」とは何を意味するか
3月の金融政策決定会合が終わり、政策金利は据え置かれた。事前の金融市場における予想とほぼ一致していたようで、特段の反論は聞かれなかった。
しかし、それで日本銀行の金融市場との対話がうまくいったことになるのだろうか。政策変更のタイミングについて、金融市場参加者のマジョリティが予想するような結果が常に出てくるというだけでは、円滑な対話が行われていることにはならない。
トランプ旋風の中で世界経済がこれからどうなるか分からなくなっている。いよいよ先行きが見通せなくなっている状況で、今後の日本経済の動きを考える論点を共有し、それについての意見を戦わせるようなコミュニケーションも必要ではないのか。日本銀行も、金融市場も、完璧に将来を予想することはできない。だからこそ、そのような対話を通じて、どういう金融環境をつくっていくのがベストなのか、両者で考えることが重要だ。
ひとことで金融市場と言っても広く、様々な見方がある。一方、政策決定の結果は1つなので、そうした様々な立場の見方に沿うこともあるだろうし、沿わないこともある。その見方、考え方の違いをはっきりさせるためにも、単に「今度は政策変更があるか、ないか」といったことばかり議論するのでは不十分だ。
そもそも、物価変動のあるべき姿について、議論のすれ違いがないだろうか。
日本銀行の金融政策においては、物価の安定を図り、国民経済の健全な発展に資することが理念となっている。その物価の安定とは、長い目でみて消費者物価の総合指数の前年比を2%前後で推移させることになったのではないか。
「いや、インフレ目標は長期のものだとの正式表明は日本銀行からなされていない」という反論があるかもしれない。しかし、かつての「2年で2%」という日本銀行のコミットメントは実現できなかった。さらに、今日、目標の2%を上回るインフレがもう3年も続こうとしている。そんな中で、2%の目標は短期のものだという話にはさすがにならないだろう。