
(舛添 要一:国際政治学者)
トランプ大統領の関税攻勢が止まらない。4月12日には、鉄鋼製品とアルミニウムに25%の関税を課した。日本も例外ではない。日本からアメリカに輸出される鉄鋼製品の167品目、アルミ製品の123品目、合わせて290品目が対象となる。武藤経産大臣は訪米し、除外を申し入れたが、容れられなかった。
関税の影響
EU、カナダ、中国などは報復関税という対抗手段に出る。今後の世界経済は縮小する危機に直面している。
4月1日からEUが発動する第一弾の対抗措置の対象になるのは、バーボン、ジーンズ、二輪車などである。4月中旬までに発動する意向の第二弾は、鉄鋼・アルミニウムなどの工業製品、鶏肉、牛肉、野菜などの農産物が対象となる。
最大で260億ユーロ(約4兆2000億円)にのぼる。トランプは、「EUはアメリカを利用するために結成された」という間違った認識を示し、EUが報復関税を課せば、またアメリカは報復すると述べている。
カナダも、13日からアメリカの鉄鋼・アルミニウム、コンピューター、スポーツ用品、鋳鉄製品などに25%の関税を課す。

中国は、2月に石炭とLNGに15%、原油、農業機械、ピックアップトラック、大型エンジン車に10%の報復関税を課した。3月4日にアメリカが追加関税率を10%から20%に上乗せしたことに対して、3月10日に鶏肉、小麦、トウモロコシなどに15%、大豆、豚肉、牛肉、水産物、果物、野菜などに10%の追加関税を発動した。
このような関税の応酬が続けば、世界経済は収縮する。トランプは、次には自動車に25%の関税を発動する意向を示している。そうなれば、日本のGDPは0.2%減少するという。
アメリカ国民への影響も計り知れない。関税の分だけ価格が上昇するからである。たとえば、アルミ缶の価格が上がるため、ビールをはじめ飲料の値段が上がってしまい、消費が減る可能性がある。
ロイター/イプソスが3月11、12日に行った世論調査では、トランプの経済政策について、57%が「あまりにも常軌を逸している」と考えており、そうでないという回答の30%の約2倍に上った。共和党支持者でも3人に1人は常軌を逸していると答えている。ただ、トランプの政策が「長期的には報われる」という意見が41%で、共和党支持者では79%にのぼる反面、民主党支持者では5%にすぎない。二分されたアメリカである。