
(国際ジャーナリスト・木村正人)
「私のスターリンクはウクライナ軍のバックボーン」
[ロンドン発]ウクライナ和平に向けた米国、ウクライナ両国政府高官の協議が3月11日、サウジアラビア西部ジッダで行われた。和平後も安全保障の保証を求めるウクライナは英仏の助言で第1段階として空と海の停戦を提案したものの、停戦を巡る米露の思惑とは食い違う。
2月28日、米ホワイトハウスで行われたドナルド・トランプ大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の会談はケンカ別れに終わった。トランプ氏はゼレンスキー氏を服従させるためウクライナへの軍事支援と情報共有を即刻停止している。
11日の高官協議を受け、ゼレンスキー氏はミサイル、ドローン(無人機)、爆弾、そして黒海だけでなく、すべての前線を含む包括的な30日間停戦に関する米国の提案に同意した。トランプ氏は軍事支援と情報共有を再開した。
あとはロシアがこれを受け入れるかどうかだ。交渉の蚊帳の外に置かれた欧州は進展を歓迎したものの、いつハシゴが外されるか分からない不安と恐怖が刻み込まれたに違いない。
高官協議を直前に控えて、ウクライナ支援を巡ってSNS上でこんな応酬があった。
第2次トランプ米政権の要職を担う米実業家イーロン・マスク氏は自らが保有するX(旧ツイッター)に3月9日「私は文字通りウクライナを巡ってウラジーミル・プーチン露大統領に一対一の格闘を挑んだ。私のスターリンクはウクライナ軍のバックボーンだ」と投稿した。
「スターリンクをオフにすれば、ウクライナの前線全体が崩壊する。私がうんざりしているのはウクライナが必然的に敗北する膠着状態での長期間にわたる殺戮だ。真に心配し、考え、理解する者は誰でも肉挽き機を止めることを求めている。今こそ平和を」(マスク氏)