代替の仏衛星運用企業の株価が390%近く急騰
収益ベースで世界3位の衛星運用企業、仏ユーテルサットの株価は一時390%近く急騰した。ユーテルサットはスペースXなどのロケットを使用して衛星を宇宙に打ち上げ、低軌道と静止軌道に展開。スターリンクとは競合関係にある。
トランプ氏が返り咲いてから米国とウクライナの関係は悪化。ユーテルサットはウクライナに追加のインターネットアクセスを供給するため欧州連合(EU)と協議中だ。ウクライナと米国の交渉が決裂した場合、スターリンクからユーテルサットに切り替えられる可能性がある。
ユーテルサットが運用する衛星は635機以上。スターリンクは7050機以上でスケールに大きな違いがある。シンクタンク「英国王立防衛安全保障研究所」(RUSI)のジャック・ワトリング上級研究員(陸戦)は英紙フィナンシャル・タイムズへの寄稿(10日付)でこう指摘する。
「米国は次にスターリンクを閉鎖し、ウクライナの指揮統制を深刻に混乱させる恐れがある。トランプ氏がウクライナの最前線の崩壊を気にかけているのかどうか不明だ。トランプ政権は欧州の安全保障は欧州が管理すべきだという考えを明確にしている」
ウクライナの崩壊がこのような変化をもたらすのであれば米国はそれを戦略的成功と見なす可能性が高いとワトリング氏は言う。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。