
(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手が日本時間3月28日の現地開幕戦で本塁打を放つなど華々しい活躍を続けているが、海を渡った日本人選手の中には苦戦を強いられている者もいる。阪神からマイナー契約でフィリーズへ移籍した青柳晃洋投手、中日からナショナルズへメジャー契約で移籍した小笠原慎之介投手だ。
いずれもオープン戦で結果を残せず、マイナー降格を宣告された。今後はマイナーからメジャー昇格を目指すことになる。
2人の移籍は、自由な移籍交渉を行うことができるフリーエージェント(FA)の取得前に、日本の球団がメジャー挑戦を容認するポスティングシステムによって実現した。このシステムは、メジャーから選手獲得の“草刈場”となる日本球界からの早期流出を加速化させる要因にもなっている。
一方、メジャーで活躍できなければ、すぐに日本球界へ復帰したいという選択肢を持つ選手が出てきてもおかしくはない。そのときに問題となるのが、制度の“盲点”に起因する復帰先だ。実際、青柳投手の日本復帰説が物議を醸している。
青柳投手がヤクルト移籍?
「マイナー降格の青柳晃洋にヤクルト移籍が急浮上」
産経新聞は3月25日、センセーショナルな見出しの記事をウェブサイトにアップした。著者は、阪神ネタを中心に数々のスクープを出してきた名物コラムニストだ。
青柳投手が投手陣の充実したフィリーズでメジャー昇格を勝ち取れる可能性は低く、4月中にも解雇通告を受ける可能性が極めて高いと指摘。今後の選択肢は日本球界復帰か米独立リーグ移籍とした上で、前者を選択するならば、ヤクルトが本命になるという。
あくまで観測的な記事で、青柳投手本人はMLBジャーナリストの山田結軌氏がJ SPORTSに寄稿したコラム記事の中で「もともとマイナー契約で来ているんで、メジャーに上がるチャンスがあるように頑張っていくしかないなと思っています」などとコメントしている。
ただし、産経新聞のコラムには着目すべき点がある。青柳選手が解雇されれば、今シーズン中に日本球界へ復帰することが制度上は可能だという指摘である。
どういうことか。