ドジャース入団を決めた佐々木投手(写真:AP/アフロ)

(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)

 プロ野球・ロッテから米大リーグ挑戦を目指していた佐々木朗希投手が、「移籍先の大本命」とされたロサンゼルス・ドジャースに入団することが決まった。20球団以上が獲得に名乗りを挙げた「令和の怪物」を射止めたドジャースには大谷翔平選手、山本由伸投手が在籍しており、新シーズンからは日本選手が3人となる。

 なぜドジャースは、他球団との激しい争奪戦を制して日本球界を代表する選手を3人も獲得できたのか。理由は豊富な資金力やメジャー屈指の選手育成力だけではない。日本人コミュニティーが発達し、温暖な気候の米西海岸に位置する地理的条件も優位にはたらいただろう。

 太平洋を隔てるものの、ドジャースは“日本の隣”に位置するロサンゼルスを本拠地とし、大谷選手らの加入でますます日本の野球ファンとの距離が接近している。その“地の利”を生かし、日本での選手獲得やビジネスを進めるしたたかさが顕著になっている。

ふたを開ければ大本命のドジャース

「とても難しい決断でしたが、野球人生を終えて後で振り返ったときに、正しい決断だったと思えるように頑張ります」(一部を抜粋、原文ママ)

 佐々木投手は自身のインスタグラムにドジャースのキャップの写真を投稿し、こう決意を記した。現地の報道によれば、20球団と1次面接を行った後、少なくとも8球団との面談を済ませていたがヤンキース、カブスなどが脱落。ドジャース、パドレス、ブルージェイズの3球団に絞り込まれた末に、最終的にドジャース入りが決まった。

 佐々木投手は、マイナー契約しか結ぶことができないポスティングシステムの「25歳ルール」の対象選手のため、契約金や年俸総額などの金銭的な条件では差がつかず、佐々木投手が求めていた投手育成のプランなどが判断材料となったとされる。

 ドジャースがメジャー屈指の充実した先発投手陣を抱え、しかもローテーションを6人で回す方針となっていることも利点となっただろう。

 新シーズンから投手としても復帰を目指す大谷選手、山本投手、新加入で過去2度の最優秀投手「サイ・ヤング賞」を獲得しているブレーク・スネル投手、昨季の開幕投手のタイラー・グラスノー投手、22年に16勝をマークして今季はけがから復帰を目指すトニー・ゴンソリン投手とエース級が5人。ほかにも、20代の有望株や、けがから復帰を目指して再契約が濃厚とされる通算212勝左腕のクレイトン・カーショー投手らも控えそうだ。

 大谷選手らケガからの復帰組も考慮し、先発ローテーションは余裕を持ってやりくりしていく公算が大きい。佐々木投手については、多くの野球解説者が「まだ体は発達途上にある」と話すように、1年目からメジャーに昇格しても、フィジカル強化などを継続していくことになる。

 日本時代に投球規定回数に達したことがない佐々木投手からすれば、登板間隔に余裕があるドジャースは、けがの不安リスクを軽減できるメリットも大きい。豊富な戦力はチーム内での高い競争が求められる一方で、マイナー契約のためにFAになるには少なくとも6シーズン在籍する中で、長期的な視野で成長を見据えることもできる。