毎年、NPBの日本シリーズは、MLBのワールドシリーズと日程が重なっている。しかし昨年までは、そのことが問題視されることはなかった。ワールドシリーズに、日本人選手が出ていなかったからだ。
日本人選手が最後にワールドシリーズに出場したのは、2020年、レイズの筒香嘉智だった。しかし筒香は代打で3回打席に立っただけであり、NHK BSで中継があったもののほとんど話題にならなかった。
しかし今年は、全く状況が違った。
日本シリーズ中継時間にワールドシリーズのダイジェストを放送
NPBの日本シリーズは10月26日からDeNA対ソフトバンクの顔合わせで始まったが、まさに同じ日(現地時間では10月25日)にドジャース対ヤンキースのワールドシリーズも始まった。ともにア・ナ両リーグを代表する人気チームだが、その上、ドジャースには大谷翔平、山本由伸と2人の日本人選手がいた。
とりわけ大谷翔平である。今年の大谷は公式サイトのトップ画面にたびたび登場した。おそらく登場回数では、メジャーリーガー1位だと思うが、ドジャースという人気球団に移籍したこともあって、大谷はMLBでもトップクラスのスター選手になった。そしてMLB史上初の50-50(50本塁打50盗塁)を達成するなど、期待をさらに上回る活躍をしたのだ。注目度が高まらないはずがない。
シーズン中はNHKのBSが試合中継を行っていたが、ワールドシリーズも引き続きNHK BSが担当。NHKはアナウンサーと解説者の田中賢介を現地に派遣し、放送ブースから放送した。
一方で、地上波では、フジテレビもワールドシリーズの試合を放映した。MLBのオールスターゲーム、ワールドシリーズの試合中継は、NHKと民放が交互に担当することになっている。民放は持ち回りで、今回はフジテレビの番に当たっていた。
今春、フジテレビは大谷翔平の新居をめぐる報道で、大谷サイド、ドジャースから「出禁」扱いになっていると報じられた。それだけにフジは期するところがあったはずだが、リポーターの元木大介は、大谷の愛車をSNSで上げたこともあり、大谷に取材拒否されたと報じられた。
前述のように、今年の日本シリーズとワールドシリーズは、同じ10月26日に始まったが、日本時間でワールドシリーズは朝9時前後、日本シリーズは午後6時前後の試合開始であり、放送時間が重なることはなかった。
しかしフジテレビは当日の夜7時前後からワールドシリーズのダイジェストを放映した。日本シリーズと完全に被る時間帯だった。
NPBはこれに対し、フジテレビ記者の日本シリーズでの取材パスをはく奪したと報じられた。
ちなみに、ペナントレースはホームチームが主催者だが、オールスターと日本シリーズはNPBが主催者だ。NPBにとってはこの2大会の入場料や放映権収入が「主たる収益」となっている。