またスポーツライターの鷲田康氏はNumber Webの記事で、
「日本シリーズの地上波中継に対して、球界全体の事情に無配慮で身勝手、センスのない判断だったと言わざるを得ないものだった」
としつつも、
「一番危うく思うのは、プロ野球は社会の文化的公共財であり、その取材をする権利についてNPBが今回のように恣意的に取材証の没収、出入り禁止処分などを発する可能性があることだ。これを許すことは、メディアの正確なプロ野球報道の妨げとなる危険性にも繋がりかねない」
と危機感を表明した。
松谷氏、鷲田氏に共通するのは「NPBの恣意的な権力の行使」が、スポーツ報道をゆがめかねない、という懸念だ。もっともなことだと思う。
付け加えるとすれば、ワールドシリーズで活躍した大谷翔平も、山本由伸も少し前までNPBの球団で活躍していた。商売敵ではないはずだ。
テレビ局への締め付け、野球離れが進む中でやるべきことなのか
昨年の第5回WBCで侍ジャパンが優勝した後の、春の甲子園の閉会式で、日本高野連の寶馨会長は、
「大会中にWBC、侍ジャパン日本代表チームは世界一になりました。素晴らしいチーム、素晴らしい選手たちであります。皆さんも感じられたと思います。上には上がある。決勝戦に勝ち進んだ選手はもとより全国の高校野球の選手たちがあのような一流の選手を目指して頑張っていただきたいと思います」
と挨拶をした。野球界の連帯を呼び掛けた見事なメッセージだった。
「野球離れ」が止まらず、競技人口が減っている日本野球である。大谷翔平は昨年、全国の小学校にグローブを配布した。それは「日本野球の発展」を願ってのことだ。その志は、NPBの選手たちと何ら変わらない。
多くの野球ファンは、大谷など日本人のアメリカでの活躍を喜びつつ、日本のプロ野球も楽しんでいる。
今年で90年を迎えた日本プロ野球を統括するNPBにとって、MLBも野球の発展を願う志をもつ仲間ではないのか?
例えば日本シリーズの試合開始前に、ワールドシリーズに臨むメジャーリーガーにエールを送るなど、連帯を呼びかけるべきではなかったか。そういう度量、雅量を示すべきではなかったか?