(写真:Usa-Pyon/Shutterstock)

 全国高校野球選手権大会、つまり「夏の甲子園」と言えば「朝日」という名前が浮かんでくる。朝日新聞社が日本高野連と共に「主催者」になっている(毎日新聞社が後援)。なぜそうなのか、疑問に思う人も多いようだが、朝日新聞社はスポーツを「ビジネスモデル」にした最初の日本企業なのだ。

夏目漱石に野球を教えた正岡子規

 日本に野球がもたらされたのは公式には1872年のことだ。お雇い外国人として開成学校(のちの東京帝国大学)に赴任したホーレス・ウィルソンが学生たちに手ほどきしたのが最初だという。

 野球は伝来当初から日本人の性分に合っていた。明治の文豪、夏目漱石邸の裏には、当時の野球強豪校、郁文館のグラウンドがあったが、漱石邸によくボールが飛び込んだという。これをモチーフにしたエピソードが「吾輩は猫である」に出ている。

正岡子規と夏目漱石が一時同居した愛媛県松山市「愚陀仏庵」、2010年に倒壊し今はない(筆者撮影)
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 漱石に野球を教えたのは親友の正岡子規だと言われているが、子規は野球の短歌をいくつも作っている。

〈いまやかの 三つの塁に人満ちて そぞろに胸の うちさわぐなり〉

〈ベースボール うちはつす球キャッチャーの 手にありて ベースを人のゆきかてにする〉