また、日本高野連はコロナ禍の2021年には朝日新聞社のクラファンサイト「A-port」でクラウドファンディングも実施している。

新聞拡販の武器にはならなくなった高校野球

 今も新聞社と高校野球の関係は深い。都道府県高野連の中には、広報窓口を新聞社の運動部記者が代行している地方がある。他のメディアが取材するときには、ライバル新聞社の記者に取材申請することになる。

 また出場校がバスで甲子園に向かうときに新聞社の若手記者が同乗し、宿舎に同宿することも多い。密着取材はできるだろうが、例えば喫煙などの不祥事が生じたときに、これを報じることができるのだろうか?

 朝日、毎日両新聞社にとって中等学校野球、高校野球は「新聞拡販」の強力な武器になった。

 これに倣って、日本では新聞社がスポーツイベントを主催、運営する例が多くみられる。海外でもなくはないが、このビジネスモデルは日本独特のものだといえる。

 しかし100年が経過し、もはや高校野球は新聞の「拡販手段」にはなっていない。そもそも新聞というメディアそのものが限界を迎えている。

 アメリカ人に「春夏の甲子園」を説明するときに、「(大学アメフトの頂点の大会である)ローズボウルのようなものだ」と言うと通りがよい。しかし、その人気、盛況ぶりでは共通するものの、ローズボウルでは巨額の放映権などビッグマネーが踊るのに対し、甲子園はあくまで「アマチュアリズム、ボランタリズムの祭典」だ。

「僕に任せてくれれば、高校野球をビッグビジネスにするよ。入場料、物販、ライセンス、放映権などを組み合わせて大きな収益を上げて、野球振興に寄与することができるんだけどなあ」

 スポーツビジネスで手腕を振るった経営コンサルタントは筆者にこう言った。

 1世紀を経て「高校野球」というビジネスモデルは、再考すべき時期にあるのは間違いないだろう。