3月26日の会見で、第三者調査委員会の調査報告書に対する見解を語った斎藤元彦・兵庫県知事

一連の文書問題でなおも揺れる兵庫県。斎藤元彦知事が昨年3月の定例会見で、自身を告発した県民局長の降格人事を発表してからちょうど1年が経過した。県設置の第三者調査委員会がまとめた調査報告書に対し、斎藤知事は「私自身は見解が違う」と述べるなど、なお従来の主張は変えていない。前回に続き、報告書の記述から、問題が起こった原因と県職員や県議会の反応をお伝えする。(以下、文中敬称略)

【前回から読む】
◎「許せない!」斎藤元彦知事が机を叩いた音は隣の秘書課まで響き渡った——第三者調査委員会の報告書を読み解く

(松本 創:ノンフィクションライター)

「一番問題なのはコミュニケーションギャップ」

「われわれは、知事の個人的な資質を問題にするつもりはございません。問題はむしろ、制度とか組織の問題として考えないといけないだろうと。その点で一番問題なのはコミュニケーションギャップ、ないしは不足だろうと思います」

 告発発文書問題で兵庫県が設置した第三者調査委員会の委員長、藤本久俊は調査報告書提出後の記者会見でそう語った。

 斎藤元彦が知事の資質を欠くことは、前回の記事を含め、これまで何度も書いてきた。失職後の出直し選挙で再選はされたものの、その公正性には大きな疑念が生じ、県民の分断が広がっている。今月初めに百条委員会の調査結果が出たが、「一つの見解」と矮小化し、一顧だにしない。そして彼の県政下で、県職員や元県議が3人、職務に関わると思われる理由で自死に追い込まれている──。

 だが、第三者委の藤本が「個人的な資質の問題にはしない」と述べたように、すべてを個人に帰責し、糾弾するだけでは本質的な解決にはならないことも間違いないだろう。兵庫県庁の体制や組織風土にまで踏み込んで、背景要因を取り除かなければ、知事が代わってもまた同じことが繰り返される恐れがある。第三者委の報告書と委員長の言葉の意味を、私はそう受け止めている。

調査報告書を提出し記者会見で説明する第三者調査委員会。左から3人目が藤本久俊委員長=3月19日、兵庫県庁

 まず、組織としての問題が最も現れたのが、告発文書を公益通報と取り扱わず、告発者探しに走った県の判断である。