告発者探しは違法、懲戒処分も無効と判断

 元県民局長が昨年3月、県警や報道機関など10カ所に送った文書は、公益通報者保護法に定める「3号通報」、つまり外部公益通報に当たると第三者委は判断した。贈答品(いわゆる「おねだり」)の件は贈収賄罪、プロ野球優勝パレードをめぐる「キックバック」疑惑は背任罪など、刑法に触れる可能性のある内容が含まれていたためだ。

 副知事(当時)の片山安孝が百条委で主張した、「クーデターという不正目的だから公益通報には当たらない」との主張は退けられた。知事や側近幹部への不満はうかがえるものの、元県民局長は退職間近であり、知事失脚や政権転覆を意図したとまでは認められないこと。また、「職員の将来を思っての行動だ」と報道機関向けの文書で説明していたことなどが理由だ。

 文書が公益通報である以上、告発者探しは違法となる。元県民局長を特定したメール調査も、片山が行った事情聴取や公用PCの回収もだ。調査が違法だから、5月7日に下された「停職3カ月」の懲戒処分も無効だと第三者委は判断した。ただし、懲戒理由は文書の作成・配布以外にも3つあり、それらは有効だという。いずれにせよ、懲戒処分はいったん取り消し、再検討されねばならない。

 斎藤や県幹部はなぜ公益通報として取り扱わず、違法な探索行為に走ったのか。報告書は、斎藤が文書を入手し、片山ら側近4人を呼んで対応を協議したスタートから誤っていたと書く。いずれも文書に名前が出てくる利害関係者であり、「極めて不当」だと。

〈上記利害関係のある者が揃って対応策を協議したために、各々が自分の指摘されている事実を否定し合う会話の中で、本件文書を「核心部分が真実でない怪文書」と決め付け、公益通報者保護法の適用可能性に思い至らず、通報者の探索へと至ることとなった。このように、県が措置の方向性を見誤った原因は、利害関係のある者の関与にこそあると言うべきである〉

 元県民局長に処分を下した翌日、神戸市内のある会合で斎藤と片山に会った報道関係者によれば、2人は文書問題を楽観視していたという。斎藤は「私は調査に関与してないんで」とはぐらかし、片山は「あんなん、どうってことない。すぐ終わりますわ」と笑い飛ばした。被告発者でありながら、調査・処分する側に立った2人は、これで幕引きできると高を括っていたのだろう。

 だが、県議会から、客観的な第三者調査を求める声が上がる。今年1月に死亡した竹内英明元県議が所属した「ひょうご県民連合」である。他会派もこれに続き、並行して百条委設置の声も高まってゆく。当初は再調査に否定的だった斎藤も受け入れざるを得なくなり、第三者委の設置を表明した。元県民局長の処分決定から、ちょうど2週間後のことだった。