
(小林 啓倫:経営コンサルタント)
SEO、GAIOの次に来る「AAIO」
以前からこの連載で、「GAIO」という概念があることを取り上げてきた。これは「生成AI最適化(Generative AI Optimization)」を略した言葉で、従来の「検索エンジン最適化(SEO: Search Engine Optimization)」のように、ネット上にある自社コンテンツへのアクセスを増やすための取り組みを指す。
ただし、SEOが検索エンジンを意識して自社コンテンツを最適化するのに対し、GAIOでは生成AIを意識した最適化が行われる点が異なる。生成AIがどのようにして、ユーザーに代わってウェブサイトを検索し、情報を集め、回答となる文章を生成するのかというプロセスを理解した上で、その結果を自社にとって有利なものにするために、コンテンツを工夫しておくわけだ。
ところがいま、事態はさらに先へ進もうとしている。生成AIの技術が高度化し、より自律的に、つまりユーザーに代わって自動的に動作する「AIエージェント」へと進化しつつある中で、それに対応した工夫を進めるべきだという声があがっているのだ。
AIエージェントは「エージェント型AI(Agentic AI)」とも呼ばれるため、「エージェント型AI最適化」の頭文字を取って、SEO、GAIOに代わる「AAIO」という概念が提唱されている。
いくら何でも変化が急すぎる、と感じたかもしれない。しかし技術の高度化は確実に進んでおり、既にAIエージェントも珍しい存在ではなくなってきている。
インターネットを利用するのはもはや人間だけではない
AAIOに関する研究のひとつ、米イェール大学の研究者らが執筆した論文によれば、iPhoneのSiriやAmazonのAlexaなど、音声ベースの仮想アシスタントが内蔵されている端末やアプリケーションの数は、2025年2月の時点で約84億に達しているそうだ。世界人口が約80億人であることを考えれば、この数がいかに多いかが分かるだろう。
もちろん、それらすべてが現時点で高度なエージェント機能を持つわけではないものの、ますます多くのAIが、人間に代わってウェブ上で活動するようになってきている。
実際にAmazonは、2025年2月に「Alexa+」というAIを搭載したエージェント版のAlexaを発表した。もはやインターネットやデジタルコンテンツを利用するのは、人間だけではないのだ。
AIエージェントとは、自律性、意思決定能力、デジタル環境への動的な対応力を特徴とする、従来のAIシステムから大きく進化したシステムを指す。従来のAIアプリケーションが狭い条件内で動作し、明示的な人間の指示を必要とするのに対し、AIエージェントは幅広いデジタル環境の中で積極的に活動し、自律的にタスクを実行し、既存の文脈に基づいた意思決定が可能だ。
ChatGPTなどのチャット型生成AIが「人間に答えを提示する」スタイルだったのに対し、AIエージェントは「自ら情報を集め・判断し・タスクを実行する」ところに大きな特徴がある。そうした新たなAIが自社のデジタルコンテンツを扱うことを想定して、各種の対応を進めなければならないのである。
この新しい現実に対応するために生まれたのがAAIOだ。では、具体的にどのような対応を進めるべきなのか、先ほどの論文で指摘されている内容を整理してみよう。