「世紀の番狂わせ」と言われた2016年の米大統領選(写真:Abaca USA/アフロ)
「世紀の番狂わせ」と言われた2016年の米大統領選(写真:Abaca USA/アフロ)

(小林 啓倫:経営コンサルタント)

「世紀の番狂わせ」だった2016年の米大統領選挙

 いまや世界経済最大の不安定要因となっている米国のトランプ大統領だが、その1期目を誕生させた2016年の大統領選挙も、世紀の番狂わせと呼べるほど予想に大きく反するものだった。少なくとも「選挙のプロ」を自称していた各種メディアや組織にとっては。

 2016年の米大統領選では、多くの事前予測において、民主党のヒラリー・クリントン候補の勝利が予想されていた。

 たとえば、さまざまな予測を的中させてきた統計分析サイト「FiveThirtyEight」は、投票日の11月8日に投稿された記事において、「世論調査のみのモデルではクリントン氏の勝利確率は71%、世論調査プラスのモデルでは72%」と予測。ニューヨークタイムズ紙の「The Upshot」も、投票日に公開された記事において、クリントン氏が勝利する確率を約85%と予測していた。

 ところが、ご存知の通り、実際の結果はこれらの予測を大きく裏切るものだった。

 たとえば、トランプ氏は事前の予測ではクリントン氏が有利とされていたラストベルトの激戦州、ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニアなどにおいて、僅差ではあったものの勝利。そして最終的に、トランプ氏が304人の選挙人を獲得し、227人にとどまったクリントン氏に勝利して大統領の座についた。

 なぜ予測が大きく外れてしまったのか。その原因のひとつとして指摘されているのが、従来の予測手法の限界だ。

 たとえば、これまで典型的だった電話による世論調査では、調査に協力する人が減少し、特定の層(若年層や多忙な層など)の意見を捉えにくくなっていた。また調査に回答する人は大卒者に偏る傾向があり、トランプ氏の重要な支持基盤であった「非大卒の白人労働者層」の声が、実際の投票行動よりも過小評価されていた可能性も指摘されている。

 SNSの影響力も見過ごせない。