偵察ドローンを扱うウクライナ兵(写真:ロイター/アフロ)偵察ドローンを扱うウクライナ兵(写真:ロイター/アフロ)

 ChatGPTに「○○は将来どうなりますか?」と直接的に尋ねても、大抵は「確かなことは言えません」といった控えめな返答しか得られない。その背景には、未来の出来事を予測しないようChatGPTの頭脳であるLLM(大規模言語モデル)に調整が施されている可能性も指摘されている。ところが、プロンプトにある工夫を加えると、雄弁に未来を語り出すという。どういう工夫なのだろうか。(小林 啓倫:経営コンサルタント)

生成AIの予測力を上げるには

 質問すれば何でも答えてくれる、便利な生成AI。いっそ未来のことも聞けないかというわけで、さまざまな形で生成AIを未来予測に活用する取り組みが行われてきたことは、この連載でも何度か取り上げた。

 たとえば、専門家が編み出した「未来予測手法」に従うよう指示した生成AIは、予測精度が上がるという研究結果が出ている(参照記事)。

 しかし、もっと簡単にChatGPTの予測精度を「爆上げ」できるプロンプトがあるという研究結果が発表された。それは「未来を物語形式で描かせる」というものだ。

 ChatGPTの「頭脳」となっているのはLLM(大規模言語モデル)と呼ばれる技術だ。簡単に言うと、「ある言葉の次にどのような言葉が来る可能性が高いか」を予測する技術だ。

 そのため「日本の首都は」と聞かれると、その言葉の後に続くのが「東京」である可能性が高いと判断し、「東京です」と回答することになる。したがって、この能力をうまく活用すれば、新しい未来予測の手段になり得ると言われている。

 ただ、LLMがどの程度正確な予測を出せるのかはまだ十分に解明されておらず、研究が続けられている。今回、取り上げる論文も、そうした研究のひとつだ。

 論文を発表したのは、米テキサス州にあるベイラー大学の研究者ら。彼らによると、LLMに未来を予測させる際には、彼らが「未来の物語」戦略と名付けた手法を取るのが良いという。