ウクライナ侵攻の展開を物語プロンプトで予測してみると……

 最後に、こんな実験をしてみよう。2025年3月時点で、ロシアによるウクライナ侵攻はまったく解決の糸口が見えていないが、果たして今年どのような展開を見せるのだろうか。ChatGPTに予測させてみよう。

 まずLLMには、ChatGPTで使用できる最新モデルのひとつである「GPT-4.5」を選択した。次に、ChatGPTのウェブ検索機能を使用して、ウクライナ侵攻に関する最新の情報を集めさせた。それはGPT-4.5の学習データが、2023年11月の情報までしかカバーしていないため、それ以降の情報も考慮させようという意図からである。

 そして集められた情報、ならびに学習データを通じて元からGPT-4.5が持っていた「知識」に基づいて、2025年内に何が起きるかを予測させた。

 入力したプロンプトは次のようなものだ。

「2026年の初め、国際政治学者のサラとジョンはカフェで話しています。サラは言いました。『2025年はロシアのウクライナ侵攻について、事態が大きく動いた年だったよね。主にどんな出来事があったか覚えてる?』。ジョンが答える物語を続けてください」

 さて、この問いに対し、ChatGPTはどう回答したのか。前述の実験のように、100回繰り返して結果を平均したいところだが、今回は数回実行した中のひとつを紹介しておこう。

 ジョンは少し考え込んでから答えた。

 そうだな、2025年は本当に転機だったよね。まず、3月に中国が初めて和平調停に積極的に乗り出したことは大きな出来事だった。北京で開かれた和平協議にはゼレンスキー大統領とプーチン大統領がオンラインで同席して、世界中が驚いたよ。

 次に、夏頃にはウクライナがクリミア奪還作戦を大規模に展開して、9月にはセヴァストポリが一時的にでもウクライナ軍の管理下に戻った。あれは衝撃的だったね。その後、ロシアが戦術核の使用をほのめかしたことで国際社会が強く動揺したのを覚えてるよ。

 でも、その後、NATOとアメリカが『核の使用は絶対に容認しない』と明確な警告を出したことでロシアが態度を軟化させ、11月にはトルコを仲介者として新たな停戦合意が成立した。その結果、12月末には紛争がかなり落ち着いて、国際社会も少し安堵した、という流れだったと思うよ。

 サラは頷きながら言った。

 確かに、あの年はまさに歴史の分岐点になったね。

 今年12月末までに、トルコを仲介とした停戦合意が成立し、今回の紛争は収束へと向かう──。ChatGPTが行ったこの予測、ぜひ当たってほしいところだが。

ChatGPTの「物語」で未来が予測できる?(筆者がImageFXで生成)

小林 啓倫(こばやし・あきひと)
経営コンサルタント。1973年東京都生まれ。獨協大学卒、筑波大学大学院修士課程修了。
システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業、大手メーカー等で先端テクノロジーを活用した事業開発に取り組む。著書に『FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』『ドローン・ビジネスの衝撃』『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(草思社)、『データ・アナリティクス3.0』(日経BP)、『情報セキュリティの敗北史』(白揚社)など多数。先端テクノロジーのビジネス活用に関するセミナーも多数手がける。
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