物価高騰とトランプ関税の「非常事態」に有効策を打ち出せない石破茂首相(写真:共同通信社)

 読売新聞が4月11日付朝刊で、自民、公明両党が物価高やトランプ政権の関税措置の対応策として、消費税減税を政府に求める方向で検討に入ったと報じた。消費税減税に否定的で「国民1人当たり5万円給付」の実施に向けて調整に入ったとされる石破政権に与党内の勢力が公然と異を唱えているかのように見える。選挙目当てのバラマキがミエミエで実効性も期待できない給付金では岸田政権時代の失敗を繰り返すだけという思いが強いのだろうか。

 長期化する物価高騰にトランプ関税の暴走で日本経済は連日、吹き荒れる嵐にもみくちゃにされている。そこへもってきて政局まできな臭くなってきた。この先、どうなってしまうのか──。ジャーナリストの山田稔氏がレポートする。

物価高騰、トランプ関税対策でパッとしない石破政権の対応

 トランプ政権が巻き起こした春の嵐で世界経済が大混乱に陥っている。東京株式市場は暴落と急騰が日替わりメニューのように繰り返され、円相場は一時1ドル142円台をつけた。半年ぶりのドル安水準だ。

 トランプ政権は「相互関税90日間停止」の方針を打ち出したものの、対中国では合わせて145%の関税措置を取る強硬姿勢を見せ、これに中国が猛反発。米国からの輸入品に対する関税を125%に引き上げる措置を発動した。両国の貿易戦争はエスカレートするばかり。これがまた世界経済を混迷に陥れている。

 日本国内では物価の高騰に歯止めがかからない。4月の食品値上げは4000品目以上に及び、備蓄米が放出されたにもかかわらずコメの最新のスーパー販売価格(3月24日─30日)は4206円と13週連続の値上がりとなった。

 こうした中、実質賃金(2月)は前年同月比で1.2%減り、2カ月連続のマイナス。2024年の年間の実質賃金は前年比0.2%減で3年連続のマイナスとなった。昨年は大幅賃上げと話題になったが、結局は物価上昇に食われてしまった格好だ。今の状況が続けば今年も期待できそうにない。

 そうした状況下で物価高騰、トランプ関税対策としての石破政権の対応が注目されているのだが、これがどうにもパッとしない。物価高騰対策では消費税減税に否定的な石破政権内で「国民1人当たり5万円の給付金」という案が浮上し、今年度補正予算案の中で財源を確保するという。

 一方、トランプ関税対策では石破首相の最側近の赤沢亮正経済再生担当相を米国に派遣して交渉を進めていく方針だ。運輸官僚時代に日米航空交渉を経験したとはいえ、政治家になってからの外交交渉経験は乏しく、党内からは「未知数」「荷が重い」などの声が上がっている。

赤沢亮正・経済再生担当大臣(写真:共同通信社)