
(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)
<大手製造業の交渉状況は?>
2025年の春闘は3月12日に集中回答日を迎えた。自動車総連、電機連合、JAM(ものづくり産業労働組合)、基幹労連、全電線の5つの産業別労働組合より構成される金属労協が、製造業の大手企業53社におけるベースアップの要求・回答状況をとりまとめている。
2025年春闘における経営側のベースアップ回答額は平均して1万4575円となり、2024年の1万4638円をやや下回った。前週に発表された組合側の要求額は1万5534円で、2024年の1万4975円を上回っていたため、経営側の回答額も前年を上回る可能性があると想定していたが、やや期待外れの結果となった。

少数の企業からの回答額が下振れ、平均値が押し下げられた模様だが、大手製造業では、全体として前年並みの高水準のベースアップが続いているとの評価でよいだろう。事実、要求額に対する回答額の比率は93.8%となり、3年連続で9割を超えた。
金属労協の記者会見に基づけば、満額もしくは満額以上の回答を得る組合は、2024年の8割超に対して2025年は約6割にとどまったが、回答額の中央値は前年を上回っているとのことだ。
前年に続き、組合側が高水準の要求額を掲げたのみならず、経営側が満額に近い回答額で応じた背景としては、物価高騰が長引いている影響もあろうが、より根本的には人手不足の深刻化が挙げられる。
ここ3年ほど、大手企業では従来よりも早い段階で積極的な回答を提示する動きがみられるが、そこには人材獲得競争に対する意識が働いているようだ。
