前年並みの大手製造業に対して中小企業のベースアップはどうか?

<中小製造業の交渉状況は?>
 大手製造業では前年並みのベースアップが実現しそうだが、中小製造業の交渉状況はどうであろうか。

 金属労協傘下で機械・金属業の組合により構成されるJAM(ものづくり産業労働組合)が詳細な春闘交渉状況を公表している。平均賃上げ率(妥結ベース)は、ベースアップ分だけでなく定期昇給分を含む調査だが、ベースアップ率の参考指標になる。

 3月12日の集中回答日における平均賃上げ率を企業規模別にみると、従業員3000人以上の大手製造業では5.93%となり、遡及可能な2013年以降における最高水準を記録した。

 ただ、大手では3月中旬の集中回答日調査から6月後半の最終調査にかけて平均▲0.1%ptほど下方修正されるバイアスがある。そのため、2025年の大手製造業の平均賃上げ率は2024年最終調査(5.85%)並みで着地しそうだ。金属労協調査における示唆と大きく変わらない。

 一方、中小製造業における平均賃上げ率は、軒並み前年を大きく上回る格好で過去最高水準を記録した。例えば、従業員99人以下では2024年の4.04%から2025年に4.66%へ、従業員100人以上299人以下では4.42%から5.13%へ加速している。

 中小製造業では、集中回答日調査から最終調査にかけて平均▲0.2%ptほど下方修正されるバイアスを考慮しても、前年を上回る賃上げが実現する可能性が高い。

 人手不足が深刻化する中、中小企業では大企業との賃金格差を埋めるべく、賃上げを加速させる動きが続いていよう。もっとも、賃上げ率自体は中小企業よりも大企業の方が依然として大きく、賃金格差が拡大しそうだ。