
(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)
<貿易赤字は縮小方向>
日本の貿易収支は、2022年に▲20.3兆円と過去最大の赤字額を記録した。輸出額、輸入額とも、コロナ禍があった2020年を底として増加が続いたが、輸入額の増加幅がかなり大きく、巨額の貿易赤字につながった。
その後、2023年は▲9.5兆円、2024年は▲5.5兆円と、貿易赤字は縮小方向にある。輸入額が頭打ちとなる一方、輸出額の増加が続いているためだ。
年度ベースでみても、貿易赤字は縮小方向にある。2022年度に▲22.1兆円の過去最大を記録した後、2023年度は▲6.1兆円、2024年度は▲5.2兆円だ。
2025年(度)の貿易収支はどうなるであろうか。本稿では通関統計などのデータから、近年の貿易収支の変動要因を整理する。
また、日本は米トランプ政権から対米黒字の縮小を求められている。経済学で考えれば、特定の国に対する収支を議論するのは本来あまり意味がないが、政治的にはそうもいかない。日本の対米収支の特徴を踏まえつつ、その行方を整理する。

<名目輸入は頭打ち>
まず、輸入額の動向を振り返ってみよう。
名目輸入は2020年にコロナ禍の影響で落ち込んだ後、大きく増加し、2022年に過去最大となる118.5兆円へ達した。
名目輸入の前年比変化率は、2020年が▲13.5%、2021年が+24.8%、2022年が+39.6%だ。名目輸入は2年間で1.7倍強に膨らみ、コロナ禍前の2019年対比でみても約1.5倍に膨らんだ。だが、その後の変化率は、2023年が▲6.8%、2024年が+2.0%と頭打ちとなっている。
2021年から2022年にかけての名目輸入は、ウクライナ危機後の資源高や円安進行により価格面で大きく押し上げられたが、数量面でも増加した。
実質輸入は、2020年に前年比▲5.5%と減少後、2021年に+4.7%、2022年に+5.8%と増加が続いた。だが、2023年から2024年にかけては価格がほぼ横ばいとなる中、数量ベースで減少が続いた。実質輸入の変化率は2023年が▲3.8%、2024年が▲1.2%だ。

