対米輸出に占める自動車の割合

<対米国の貿易収支は?>
 米トランプ政権は、世界各国・地域に対する貿易赤字の削減を求めている。日本の立場からみれば、対米国の貿易黒字の削減を求められている。

 経済学で考えれば、貿易収支は当該国の貯蓄と投資のバランスで決まるものであり、特定の国に対する収支を議論するのは本来あまり意味がないが、政治的にはそうもいかない。

 米トランプ政権との関税を巡る交渉は早ければ今年の4~6月期に妥結するだろうが、いったん妥結しても、対米貿易黒字縮小が進まないようであれば、来年以降に再度交渉を迫られる可能性がある。対米収支の動向が注目される。

 上述の通り、2025年の日本の貿易収支は赤字幅が縮小する見込みだが、対米国の収支はどうなるであろうか。まずは、日本の対米収支の推移と特徴を整理する。

<約40年間で対米国の黒字額はあまり変わらず>
 日本の対世界でみた貿易収支は、1980年代から2000年代までの黒字基調から2010年代以降に赤字基調へ移り変わっているが、対米国に限ってみれば、約40年間あまり変化がない。2024年は8.6兆円の黒字であったが、1983年以降42年間の平均でみれば6.4兆円の黒字だ。

 日本の対米国輸出の製品別内訳をみると、加工製品がほとんどを占めている。その中でも、一般機械と電気機器と輸送用機器を足したシェアは、約40年間ほぼ一貫して7割強である。

 このうち、一般機械のシェアが2割強でほぼ不変な中、電気機器のシェアがアジア台頭の影響等で2割強から1割強へ落ち、輸送用機器のシェアが3割程度から4割弱へ高まっている。輸送用機器では自動車が7~8割を占めており、やはり対米黒字を左右するポイントになる。

 一方、米国からの輸入の内訳推移をみると、食料品や素材製品のシェアが相応に大きい。一般機械と電気機器と輸送用機器を足したシェアは、振れを伴いつつも3~4割程度にとどまる。

 食料品のシェアは、かつて2割程度を占めていたが、ここ10年ほどは15%前後で推移している。厳密ではないがおおむね素材製品に相当する、原料品・鉱物性燃料・化学製品・原料別製品を足したシェアは、かつて2~3割程度で推移していたが、近年は4割強で推移している。LNGなどの輸入拡大が背景だ。

 参考まで、製品別の貿易収支をみると、加工製品が輸出超過、素材製品・食料品が輸入超過となっている。