実は構造的に減少している燃料輸入
<内需増加にもかかわらず実質輸入減少>
実質輸入は基本的には内需の関数だ。近年の動向をみても、実質輸入は2020年にコロナ禍による内需縮小で減少した後、2021年から2022年にかけてコロナ禍収束による内需回復を背景に増加した。
だが、2023年から2024年にかけては、内需増加が続いたにもかかわらず、実質輸入が減少している。内訳をみると、燃料輸入、非燃料輸入ともに減少している。非燃料輸入ではコロナ禍に対応して膨らんだ特需の剥落が、燃料輸入では構造的な需要縮小が生じている。
実質ベースの非燃料輸入は、2021~22年にやや大幅な増加が続いた後、2023~24年に小幅ながら減少が続いた。
製品別にみると、2023年はコロナ禍後に急速に増加した化学製品の輸入が落ち込んだ。特に医薬品の減少が大きい。コロナ禍後、新型コロナワクチン調達に加え、医療機関の受診回避で医薬品需要が伸びたが、コロナ禍収束とともに、これらの特需が剥落している。
2024年は、コロナ禍後に増加が続いた電気機器の輸入が減少。通信機などの輸入は増加したものの、ICなどの輸入が減少しており、半導体の需要者である電子機器セクターの生産縮小を反映していると思われる。
一方、実質ベースの燃料輸入は、2013年以降に減少基調が続いている。2020年に大きく落ち込んだ後、2021~22年に微増だったが、2023~24年に再び減少している。
実質ベースの燃料輸入の減少には構造的な背景がある。
内訳をみると、原粗油および液化天然ガス(LNG)の実質輸入が減少基調にあり、電源構成変化の影響が表れている。2015年頃から、再生可能エネルギーの普及や原発再稼働を背景に、火力発電への依存度が低下傾向にある。