来年の関税再交渉はあり得る?
<2025年(度)の対米収支は?>
対米国に限ってみれば、約40年間で輸出入バランスはあまり大きく変わっていない。輸出は加工製品が中心であるのに対し、輸入は素材製品や食料品が一定のシェアを維持している。
一般に、加工製品は需要国の景気変動で数量が変化しやすい、素材製品は市況変動で価格が変化しやすい、食料品は必需品のため景気変動の影響を受けづらい、という特徴がある。すなわち、相対的な話になるが、日本から米国向けの輸出は、米国の景気変動の影響を受けやすいのに対し、米国から日本への輸入は景気変動の影響を受けづらい。
では、2025年(度)の対米国の貿易収支はどうなるであろうか。米国向け輸出については、現地の景気減速、そして関税賦課の影響により、輸送用機器を中心に減少する可能性が高い。一方、米国からの輸入について、価格面では、原油安の影響を受けるものの、中東などからの輸入分と比べれば、相対的に落ち込みが小さいだろう。
また、数量面では、日本の内需が減速しても減りづらいだろう。むしろ、関税交渉の過程で食料品やエネルギーの輸入増を約束すれば、増加する可能性もある。日本の輸入量全体は、あくまでも内需動向で決まるが、米国からの輸入については、他国から振り替わる格好で増加し得る。
以上より、2025年(度)の貿易収支は、全体では赤字が縮小しやすいものの、対米国収支に限ってみれば逆方向となり、黒字が縮小しやすいと予想する。現時点では、今年の関税交渉を乗り切れば、来年に再交渉を迫られる可能性は低いと予想する。
【宮前 耕也(みやまえ こうや)】
SMBC日興証券㈱日本担当シニアエコノミスト
1979年生まれ、大阪府出身。1997年に私立清風南海高等学校を卒業。2002年に東京大学経済学部を卒業後、大阪ガス㈱入社。2006年に財務省へ出向、大臣官房総合政策課調査員として日本経済、財政、エネルギー市場の分析に従事。2008年に野村證券㈱入社、債券アナリスト兼エコノミストとして日本経済、金融政策の分析に従事。2011年にSMBC日興証券㈱入社。エコノミスト、シニア財政アナリスト等を経て現職。
著書に、『アベノミクス2020-人口、財政、エネルギー』(エネルギーフォーラム社、単著)、『図説 日本の財政(平成18年度版)』および『図説 日本の財政(平成19年度版)』(東洋経済新報社、分担執筆)がある。