
(大井 赤亥:衆議院議員政策担当秘書・広島工業大学非常勤講師)
「公平に横柄」な衆院予算委員長の仕切り
通常国会での2025年度(令和7年度)の予算審議は、衆議院で政府予算案が修正され、高額療養費の上限引き上げ凍結で「君子豹変」した石破総理の方針転換を受け、参議院でも修正されるという異例の展開をたどってきた。
これまで、予算作成は数で多数をしめる政府与党が主導権を握り、国会での審議は政府案をほぼ「言い値」で通してきた。
しかし、少数与党下での国会で、予算案の審議も大きく変わった。とりわけ、衆議院の予算委員会の委員長に野党立憲の安住淳氏がついたことは大きい。
安住委員長といえば「誰にでも公平に横柄」といわれる議事の仕切りが着目されたが、むしろ予算案の検証の場としての省庁別審査を設けたことも重要である。

これによって、防衛装備品輸出などで非効率な予算が浮き彫りになった反面、高額療養費の負担上限の引き上げも発覚してその凍結を求める世論が高まった。
その結果、今回の通常国会では憲政史上初めて、衆議院で修正可決された予算案が参議院でも再修正されることになった。
政府予算案が国会で二転三転する事態を、政治のブレや迷走と見るか、国会の健全な機能と見るかは意見が分かれるが、私としては、これこそ少数与党下で出現した国会の本来の役割だとポジティブに評価したい。
かつて55年体制の下では、大蔵省や与党自民党が予算作成に伴う責任と利権を占有しながら、利害調整から排除された社会党は組み替え動議で政府予算案を全否定して財政への責任を放棄してきた。
そのような国会運営よりも、少数与党の下で政府が迷走しながら野党と協議し、野党も財源捻出を伴う独自の修正案を示し、曲がりなりにも予算を揉む今の国会の方がはるかに健全であろう。