石破政権にとって初の通常国会が始まる。少数与党の自民党にとって綱渡りの国会運営が予想され、夏の参院選に向けて与野党の激しい攻防・駆け引きが展開されそうだ。難局を乗り切ろうとする石破自民内には「大連立」構想もくすぶり続ける。「減税」「対財務省」という軸で見れば、自民党内の一部勢力から国民民主党、れいわ新選組までが主張を一にするという奇妙な状況もある。政界のパワーバランスはどう変化していくのか? 政治学者であり、現在は国会議員秘書として永田町の内部から政治を見つめる大井赤亥氏が解説する。
(大井 赤亥:衆議院議員政策担当秘書・広島工業大学非常勤講師)
自民・民主系・維新が「3・2・1」で得票を分け合う構図が…
2024年10月の衆院選挙は、自民党・公明党の与党を過半数割れに追い込み、野党は立憲民主が148議席へと躍進したものの、「手取りを増やす」と訴えた国民民主も大きく伸長した。2025年の政治は依然として混沌としているが、安倍政権以来の「一強多弱」という構図が崩れ、日本政治があらたな再編期に入ったことは事実だろう。
この間の日本政治を整理する認識枠組(フレームワーク)として、私は「1993年体制」と「3・2・1の法則」という視点を示してきた。
1993年の自民党分裂にともなって新生党、さきがけ、日本新党といった保守系3新党が登場し、それまでの「保守」や「革新」とは異なる「改革」が掲げられた。以降、30年間にわたり、「保守・旧革新・改革」の三極は、それぞれが固有の政策的特徴と支持基盤を持ちながら日本社会に根差してきたのであり、私はこの三極構造を「1993年体制」と名づけてきたのである。
そして「保守・旧革新・改革」からなる三極構造は、第二次安倍政権が成立した2012年以降、「自公・民主党系野党・維新」によって担われ、国政選挙の比例得票数を見れば、この三極は「3・2・1の法則」とでも呼ぶべき安定的な力関係で推移してきた。
しかし、この力関係にも変化の兆しが見えている。野党では国民民主が独自路線を進めて立憲民主との差異化を図り、「旧民主党ブロック」の一体性が揺らいでいる。左派においてはれいわが共産党を抜く議席を獲得したが、その財政ポピュリズムは野党間での不協和音を生み出している。
2024年衆院選の比例票における「自公・野党(立国れ共社)・維新」を見れば、その力関係はそれぞれ「2054万:2583万:511万」となり野党が自公を上回っている。だが、野党間の政策的隔たりを踏まえれば、それらを簡単に一括りにすることはできない。
2024年衆院選をへて、「自公・野党(立国れ共社)・維新」による「3・2・1」の力関係は揺らいでおり、政党政治の枠組は流動期を迎えている。
折しも私は、この1月から国会議員の政策担当秘書として永田町から政治を観察することになった。2025年の日本政治の変容をつぶさに捉えて報告していきたい。