東京都内で講演する石破首相(写真:共同通信社)東京都内で講演する石破首相(写真:共同通信社)

(尾中 香尚里:ジャーナリスト、元毎日新聞編集委員)

石破政権は「熟議」を理解しているか

 日本の政治の風景を大きく変えた2024年が終わる。10年以上にわたった「自民1強、野党多弱」の時代が、10月の衆院選における与党過半数割れによって大きく変わり、自民党と立憲民主党の2大政党に複数の中小野党が絡む「2強多弱」状況が生まれた年だった。

 政府・与党が事前協議という名の「水面下」で合意したことを、国会を半ば無視する形で強引に実現していく「決めすぎる政治」は影を潜め、国会という「表」の場での議論を通じて、時に政府・与党が野党の求めに応じて政策を修正する「熟議の国会」が、ようやくその「兆し」を見せ始めたのだ。

 あえて「兆し」と書いたのは、自民党の石破政権が本当に「熟議」を理解しているのか、筆者はまだ懐疑的に見ているからだ。そして、自民党が「熟議」をどこまで大切にできるかどうかで、2025年の政治の風景は大きく変わり得る。その観点から、次の1年の政治を筆者なりに展望してみたい。

 最初に、石破政権が「熟議」を理解しているかについて、筆者がなぜ懐疑的なのかを、臨時国会を振り返りながら記しておきたい。