(渡辺 喜美:元金融担当相、元みんなの党代表)
シェークスピア演劇を見ているようだった2024年
その男は突然、リア王と道化について、堰を切ったように喋り始め、止まらなくなった。まるで、シェークスピア演劇の王権とスケープゴート・メカニズムや道化の象徴学が、今の政治社会の本質であるかのように言いたげであった。
その男とは、私が久方ぶりで出演した「ビートたけしのTVタックル」(12月8日放送)の収録中の、たけしさんのことである。
兵庫県知事選挙で再選した斎藤元彦氏について尋ねられた私は、「斎藤さんが追放された王様だとすると、たけしさんの前で言うのも何ですが、立花孝志さんがイタズラ者の道化役。その一体化した組み合わせで斎藤さんは復活しましたね」とコメントした。
私の話し途中で割って入ったのが、たけしさんだった。日本よりも海外で知られた映画監督として数多くの作品を作ったクリエーターの心をくすぐってしまったのだった。台本には全く存在しないこのやり取りは、無論、カットされた。
世の中の罪や穢れを生け贄の山羊一身に背負わせて抹殺し、世の中は新しく蘇る。溜まりに溜まったエネルギーの使い古しのカス(エントロピー)を一掃し、新しいエネルギーを吹き込む儀式がスケープゴート(贖罪山羊)・メカニズムの本質である。
その中でも「王殺し」こそ、大衆にカタルシスをもたらす象徴学上最高の儀式であり、古今東西どこにでもある人類普遍の原理だ(文化人類学者・山口昌男)。
一方、道化はピエロ、フール、クラウン、トリックスターなどと称され、時に王の分身、偽王として現れる。常識はずれの非現実的、攻撃的なイタズラ者で、権力(中心)と大衆(周辺)の媒介者でもある。