「正論の異端者」だった石破氏が「偽王」に
今年は日本でも世界(英・米・韓・シリア他)でも政変や政権交代が相次いだ。日本では「裏金」に端を発した政治不信を払拭すべく岸田文雄総理が辞任。石破茂政権の誕生となったが、世の中の「蘇り」は起きなかった。
それは、象徴学的には岸田総理の「抹殺」のされ方が中途半端で、「正論の異端者」であったはずの石破総理がプチ・キングメーカーとなった岸田氏の傀儡、つまり「偽王」であることがわかってしまったからである。
国民の不満ガスが一掃されることはなかった。引っ掻き回し役の道化もいなかった。石破総理が先の所信表明演説で短命内閣だった石橋湛山の言葉を引用したのは、短ければ来年3月末まで、長くとも参議院選挙まで、というご自身の命運を予期しているからかも知れない。
「正論の異端者」として復活することはあるか?
例えば、政治改革の中で延期された企業団体献金禁止の野党案を、年度末に丸呑みすることである。
当然、自民党の自己否定につながることゆえ党内で大バトルが起きる。国民はこの種の政治劇場を好むが、石破総理は企業団体献金の禁止を憲法違反と言い切ってしまったので、それはない。
そもそも1955年の「保守合同」で生まれた自民党は、昭和15年(1940年)ごろ確立された「国家社会主義的」な統制型システムに依拠している存在である。
企業は競争するな、国家目的に奉仕せよという御触れ(国家総動員法、1938年)に則り、大蔵省の「革新官僚」がナチスに学んで立案したのが、戦費調達を企業が代行する源泉所得税である。
戦後、年末調整や基礎控除が導入され(1947年)、現在、所得控除は15種類ある。企業が徴収を代行・調整するので家族の職業や所得といったプライバシーも会社が把握する。
昭和16年、統制経済遂行のため作られた経済団体が「統制会」。今の経団連の原型である。
当時、全国に400社以上あった電力会社は9つに統合され国有化された。因みに、農協、医師会、労働組合なども原型は戦時体制で作られている。戦争遂行のため住宅営団など特殊法人が作られ、「天下り」も行われるようになった。
「戦後レジーム」はマッカーサーの占領時代に作られたものだけでなく、ごく普通の資本主義国家から国家社会主義に変貌を遂げた戦時体制の所産を多く残している(野口悠紀雄)。
かつて、経団連は傘下の業界に割り振ってピーク時100億円以上の政治献金を自民党にしていた。金丸ゼネコン事件などのスキャンダルを受けて政治改革関連法が1994年に成立。政党交付金が導入されることと相まって、経団連は平岩外四会長の時、献金の斡旋を止めた。しかし、2004年に復活。斡旋は今なお続いている。