「オルカン」や「S&P」への資金流入が続いているが…(写真:Pavel Ignatov/Shutterstock.com

「つみたて王子」こと、なかのアセットマネジメント社長・中野晴啓氏による連載「中野晴啓の正しい投資」。日経平均株価は2月22日に終値が3万9098円と史上最高値を更新したが、果たしてこの急騰はいつまで続くのか。さわかみ投信の創業者で日本の長期資産運用のパイオニアである、さわかみホールディングス代表取締役の澤上篤人氏との対談を2回に分けてお届けする。後編では、2人がともに独立系の資産運用会社を立ち上げた意義を語り合う。(JBpress)

(中野晴啓:なかのアセットマネジメント社長)

前編:日経平均株価が史上最高値、いよいよ「大暴落」始まる?新NISAの投資初心者は大火傷か、過剰流動性はもう限界超えた

当たり前の「受託者責任」すらないがしろ

──前編では、日経平均株価が史上最高値を更新し絶好調に見える株式市場が「まもなく大暴落する」、控えめに言っても大きな調整は免れないと予測する理由についてお話しいただきました。こうした状況と中野さんが資産運用会社を立ち上げたタイミングはくしくも重なったわけですが、独立系資産運用会社の存在意義をどのように考えていますか。

中野晴啓・なかのアセットマネジメント社長(以下敬称略)先ほど、澤上さんは「炭坑のカナリア」とおっしゃいましたが、新NISAが始まって浮き足立っている個人投資家の皆さんに対して、本当の意味での資産運用、つまり長期・積立・分散の必要性をしっかりとお伝えしていく役割を担っていきたいと思います。

 相場が大きく荒れたとしても、しっかりと長期視点に立った資産運用をしてもらえるよう、運用する側の理念やフィロソフィーをしっかり伝え、それによって信任を得ていくことが私たちの社会的使命だと考えています。

中野 晴啓(なかの・はるひろ) なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1987年、明治大学商学部卒業。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任し、 2023年6月に退任。9月1日、なかのアセットマネジメント設立。全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。近著に『新NISAはこの9本から選びなさい』『1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法』(写真:村田和聡)

澤上篤人・さわかみホールディングス代表取締役(以下敬称略):最近になって、金融庁は「受託者責任」ということをしつこく金融機関に求めるようになりましたが、当たり前ですよね。当たり前のことですら口を酸っぱくして言わなければならないような状況なんです、今の金融業界は。

中野:「カネをたくさん集めるのがビジネスの根幹だろう」などという金融機関の経営者すらいます。もっと資産運用の本質を勉強してほしいですよ。

澤上:まともな資産運用会社がないんですよ。だから、作らなきゃいけないんです。

 私はもう、最初から中野さんにはあそこ(クレディセゾン)の下で資産運用ビジネスをやるのはやめた方がいいと言っていたんです。でも頑張ると言うから見守ってきました。やはり、最後まで金融ビジネスと資産運用ビジネスは違うということを理解してもらえなかったね。結果的にいいタイミングで踏ん切りがついてよかったのでは。

【関連記事】
あなたは邪魔…セゾン投信前会長が語る解任劇、クレディセゾンとの亀裂と再起

 そもそも、資産運用ビジネスというのは、契約をいただいた瞬間から20年、30年、100年という長期を見据えて責任を果たすことになるので、時間軸が長い。一方、金融はその場主義だから、考え方が全く違う。

中野:そういう長期の信頼関係を資産運用会社と結ぶことになることを、お金を預ける側の方々にもしっかりと理解してもらいたいんです。長い間、一緒に歩んでいくんですよと。

 とにかく対話をして、資産運用に対する理念やフィロソフィーのメッセージを出して、共感を得ていく。それはカネ集めだけの営業とは違うんです。

 しかし、そういう考え方を理解できない大手金融機関が資産運用会社の親会社にいると、哲学を守り続けることが難しい現実があります。そのことを今回、セゾン投信を辞めなければならなくなった時に学びました。