セゾン投信会長を退任した中野晴啓氏による連載「中野晴啓の正しい投資」。第4回は、資産運用業界が抱える「親会社問題」を掘り下げる。自身の「更迭」の背景にもなった資産運用会社と株主の関係が個人投資家にもたらす不利益とは?
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第1回:あなたは邪魔…セゾン投信前会長が語る解任劇、クレディセゾンとの亀裂と再起(8月14日付、JBpress)
第2回:新NISAで資産運用はどう変わる?「長期・積立・分散」投資を生活の一部に(8月28日付、JBpress)
第3回:資産所得倍増プランを阻む壁、ファンドの粗製乱造と運用担当者の実力不足(9月25日付、JBpress)
前回*1は、岸田文雄首相が米ニューヨークで投資家向けに表明した、海外から腕利きのファンドマネージャーを日本に呼び込もうという方針を踏まえ、日本の資産運用業界が抱える「実力不足問題」について考えました。
*1:資産所得倍増プランを阻む壁、ファンドの粗製乱造と運用担当者の実力不足(9月25日付、JBpress)
今回はさらに踏み込んで、資産運用会社のガバナンスの問題についてお話しします。それが「親会社問題」です。新NISAという個人投資家にとってすばらしい制度が始まっても、大切な資金を託す資産運用会社が本当の意味で「顧客本位の資産運用」をできるかどうか、そのカギを握っている根深い問題です。金融庁も大手金融機関に、傘下の資産運用会社が顧客本位の経営をできるよう、ガバナンス(企業統治)の強化などを求める方針です*2。
*2:金融庁「強い運用会社育成を」 大手金融に統治策要請へ(10月1日付、日本経済新聞電子版)
親会社問題とは、資産運用会社の親会社が証券会社やメガバンクといった大手金融機関であるケースが多く、資産運用会社の経営が親会社の意向に大きく左右されることを指します。金融庁は2023年4月に公表した「資産運用高度化プログレスレポート2023*3」でこの問題を大きく取り上げました。くしくもその数カ月後、私が親会社の意向で会社を追われたことで、資産運用会社の独立性の問題は金融業界のみならず、世の中に広く注目されることになったと思います*4。
*3:「資産運用業高度化プログレスレポート2023」の公表について(2023年4月21日付、金融庁ウェブサイト)
*4:あなたは邪魔…セゾン投信前会長が語る解任劇、クレディセゾンとの亀裂と再起(8月14日付、JBpress)