臨時国会のほろ苦い経験を経て、石破政権は通常国会で、今度こそ本腰を入れた「熟議」を目指すのか。逆に、こんな事態を招かないよう、事前協議の枠組みをさらに強固にしようと目論むのか。

 筆者はもちろん前者を望むが、国民民主党を相手にするのに疲れた石破政権が日本維新の会に接近している現状を見ていると、後者の道を目指す可能性は否定できない。 

自民、公明、日本維新の会の3党が国会内で開いた、教育無償化に関する政策協議(写真:共同通信社)自民、公明、日本維新の会の3党が国会内で開いた、教育無償化に関する政策協議(写真:共同通信社)

 石破政権が、一部の少数野党を事前協議に加えて「一部野党の主張を受け入れた」とうそぶき、国会をないがしろにすることはないのか。そして、そんな石破政権に一部の野党が手を貸して「熟議の国会潰し」に寄与することはないのか。筆者が懸念するのはこの点である。

 懸念はどうやら悪い方に当たりそうだ。石破首相は27日、東京都内での講演で、通常国会で2025年度予算案が否決された場合、衆院解散も「あり得る」と語った。

 2日後のTBS番組で「やると言ったわけでは全くない」と軌道修正を図ったが、もう遅い。まさか解散風を吹かせるとは。

 与野党が「熟議」によって、前向きな合意形成を図れるなら、少数与党であっても予算や重要法案を成立させることができる。臨時国会で垣間見えたそんな政治のありようを、石破首相は結局信じていなかった、ということか。政治を前に進めるには、解散風を吹かせて野党をけん制するしかないと考えているということか。これでは事前協議による「水面下の合意」以下である。筆者は心底失望した。

 そして、その観点で通常国会を展望すると、注目すべきは2025年度予算案以上に、臨時国会で積み残された「企業・団体献金の禁止」なのではないかと思う。野党が予算成立を容認する条件に「企業・団体献金の廃止」を持ち出したらどうなるか、ということだ。

 与野党は企業・団体献金の扱いについて、25年3月まで結論を先送りしている。立憲が予算委員長を押さえているため、予算案の衆院通過が3月上旬以降にずれ込み、年度内成立が危うくなる可能性が否定できない。そうなると年度末に、予算成立をめぐる駆け引きと、企業・団体献金の扱いをめぐる駆け引きが、ほぼ並行して行われる可能性がある。

 立憲は臨時国会で、企業・団体献金の禁止を盛り込んだ法案を、参政党や社民党などと共同で衆院に提出した。日本維新の会も同様の独自案を通常国会に提出する見通しだ。野党の足並みが完全にそろえば、法案が成立する可能性もある。