
(尾中 香尚里:ジャーナリスト、元毎日新聞編集委員)
「商品券」で七転八倒の石破自民
通常国会が大混乱している。
2025年度予算案は、高額療養費の負担上限額の引き上げ見送りをめぐり、石破政権の方針が二転三転。予算案は参院送付後に再修正に追い込まれ、今も年度内成立の道筋が見えない。
年金制度改革関連法案も、国会提出の期限(3月14日)に間に合わぬ事態となった。13日夜には「石破首相が自民党の衆院当選1期生15人に各10万円の商品券を配った」という報道が、日本じゅうを駆け巡った。

少数与党の誕生に伴う「熟議の国会」が期待されたはずが、内実は「熟議」どころか「石破自民党の七転八倒」の様相だ。
政権周りを見ていると気が重くなるので、少し視点をずらしてみたい。13日に今国会で初めて実質的な議論が始まった衆院憲法審査会だ。
憲法審査会と言えば、これまでは護憲派と改憲派の対立が先鋭化し、改憲派が護憲派を外して改憲条文案を作ろうとするなど「熟議」とはかけ離れた姿をさらしてきた。
だが、昨秋の衆院選による「少数与党」の誕生で空気は変わった。与党は憲法審査会の会長ポストを手放し、立憲民主党の枝野幸男元代表が、野党で初めて憲法審査会長に就任した。
こういう状況のもとでこそ、憲法についても落ち着いて議論できる可能性がある。「憲法論議」と聞いただけで目を背け、耳を塞ぎたくなるようなここ10年ほどの政治状況を、枝野氏がどこまで変えることができるかを見守りたい。