「行財政改革・社会保障」をめぐる政治再編
日本政治を中長期的に規定する最大の条件は人口減少と少子高齢化であり、その大枠の下で、今後、「行財政改革・社会保障」の対立軸がより前面に出てくることは避けられないであろう。
人口減少は日々の暮らしでは感じにくい「静かなる有事」(河合雅司)であるが、確実に日本社会に変容を迫っていく。
今後、2025年から2050年まで毎年100万人規模での人口減少が想定されており、一年ごとに日本から政令指定都市が一つ無くなっていく計算になる。それにあわせて、鉄道、学校、町内会、自治体議会の議員定数など、これまで1億2000万人を与件として整備されてきたインフラを時代にあわせてどのように整理・統合していくかという課題は、日本政治を真綿でしめ上げるような最大の課題となるであろう。
人口減少がもたらす課題は、それらをいかに解決・改善するかを競うのではなく、それらの弊害をいかに緩和するかという「負の合意争点」であり、その処方箋を論じあう政党間競争を促すことが不可避であろう。
時代にうまく順応しきれていない政党
しかし、問題は、「行財政改革・社会保障」の争点軸にあって、既存の政党政治がそれにうまく順応しておらず、現実的な選択肢をわかりやすく示しえていないことである。
たとえば、行政改革において、議員定数の削減など「身を切る改革」は維新が掲げてきた政策であるが、自民党の内部にも規制改革や労働市場改革に熱心な姿勢を示す勢力が常に一定存在している。また、事業仕分けや「政治主導」の点では、旧民主党は本来、「元祖・改革政党」であった。
財政政策についても、自民党内の旧安倍派や国民民主、れいわなどが財務省敵視論と積極財政において奇妙に共振しているのに対して、野党の立憲民主の主流派がむしろ「責任政党」として財務省という官僚機構と類似のスタンスを維持している。

ことほど左様に、「行財政改革・社会保障」の争点軸において、個別の政策的スタンスは既存の政党政治の枠組を横断して分布している。
2025年の日本政治は、「行財政改革・社会保障」の争点軸に応じて、各政党がこれからの日本社会の運営をめぐる一定程度一貫した政策的パッケージを提示し、それによって有権者にとって意味のある政党選択肢の構図を示すことが必須となるだろう。