4月22日、ホワイトハウスの大統領執務室で記者の質問に答えるトランプ大統領(写真:AP/アフロ)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

株安・ドル安・債券安のトリプル安

[ロンドン発]ドナルド・トランプ米大統領が仕掛ける世界貿易戦争で大混乱する米株式市場が、ジェローム・パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長に対する大統領の攻撃によって4月21日(現地時間)にはまた急落した。貿易戦争が景気後退を引き起こした場合、パウエル氏に責任転嫁する意図がうかがえた。

 トランプ氏は自ら創設したSNS「トゥルース・ソーシャル」に「常に“遅すぎる”と批判されるパウエルはまたもや“大混乱”としか言いようがない報告書を発表した。彼はとっくの昔に金利を引き下げるべきだった。解任は一刻も早く実現すべだ」(4月17日付)と書き込んだ。

ジェローム・パウエルFRB議長(写真:AP/アフロ )

 ところが自らの発信が株価急落の原因になったと見るや、パウエル氏について「解任するつもりはない」と前言を撤回。ただし「金利を引き下げるというアイデアについてもう少し積極的になってほしい」と、利下げへの圧力はかけ続けた。

 またトランプ政権をめぐっては、交渉相手国に米国の関税を免除する代わりに中国との貿易制限を迫る計画だと報じられた。これについて、中国商務省は「わが国の利益を犠牲にして当事国が合意を結ぶ状況が発生した場合、中国はそれを認めず、報復する」と態度を硬化させている。

 4月4日に4%まで下がっていた米長期金利は11日には一時4.59%までハネ上がり、ドル相場は今年1月の1ドル=158円超から139円台に急落。製造業の国内回帰を図るトランプ氏の荒治療は株安・ドル安・債券安のトリプル安を引き起こし、米企業と米国民に痛みを強いる。