エヌビディアのH100の約6割に相当する推論性能

 こうしたな中、米中対決の趨勢を決める「半導体戦争」の雲行きまで怪しくなってきた。中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)が5月にも新しいAI(人工知能)用GPU「910C」の出荷を本格化させるというニュースが流れた。

 トランプ政権は米エヌビディアに対し、対中輸出規制に引っ掛からないよう設計された「H20」の販売にも輸出許可が必要と通達した。ロイター通信(4月21日付)が報じたところによると、華為はすでに910Cの一部出荷を始めている。

 華為の910Cは、H20の7倍近い性能を持つエヌビディアのAI用の最先端チップ「H100」を猛追している。910Cは今年1月に世界中を驚かせた中国発AIモデル「DeepSeek-R1」の推論タスクに採用された910Bを2つ組み合わせ、H100の約6割に相当する推論性能を実現しているとされる。

 米国の輸出規制は中国のAI産業に打撃を与えるどころか、これまでエヌビディアが支配してきた中国市場を中国内の半導体メーカーに奪われるという逆効果に見舞われている。910CはエヌビディアのAI用半導体を中国内から駆逐してしまう可能性がある。