(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
米大リーグのワールドシリーズ(WS)は、大谷翔平選手と山本由伸投手が所属するナショナル・リーグ王者のドジャースが、アメリカン・リーグ王者のヤンキースを4勝1敗で破り、4年ぶり8度目の頂点に立った。大谷選手にとってはメジャー7年目で悲願のシリーズ初制覇となり、日本でもスポーツの話題は、大谷選手やWS関連で持ちきりとなっている。
不運だったのが、日本のプロ野球界だ。パ・リーグを制したソフトバンクとセ・リーグ覇者のDeNAによる日本シリーズの今年の日程が、WSに重なってしまった。時差の関係で試合時間帯は朝と夜に分かれたものの、朝にWSを生中継したフジテレビが、夜の日本シリーズの試合時間帯にもダイジェスト版を放送したことで“割を食う”事態にも。
日本野球機構(NPB)がフジテレビの取材パスを没収したと報じられるなど、日本球界の危機感はかつてないほど高まっている。
「世界一 大谷」「大谷 最高の笑顔で成就」「ドジャースで悲願」――。
11月1日の東京都内の駅構内の売店には、ド派手な見出しのスポーツ紙が並んだ。
日刊スポーツ、スポーツニッポン、サンケイスポーツ、スポーツ報知、デイリースポーツ、東京中日スポーツと主要6紙全ての1面が「大谷一色」で飾られた。
1面に「大展開 祝 ドジャース優勝」と銘打ったスポニチ紙面は、新聞を見開いた2、3面もWS関連記事で埋め尽くされ、4ページ目は大谷選手を祝福する企業の全面広告が掲載され、5ページ目はWS制覇に歓喜するドジャースのチーム写真で彩られた。
日刊スポーツも5面までWS関連記事が並んだ。前夜もNHKの報道番組「ニュースウオッチ9」などが相次いでトップニュースで報じた。
移籍1年目ながらすでにドジャースの「顔」でもある大谷選手は今季、10年間で総額1000億円以上(契約時のレート)という破格の契約でドジャースへ移籍し、レギュラーシーズンでは前人未到の50本塁打、50盗塁(50―50)をマーク。WS制覇という最高の栄誉を手にし、野球界はまさに「大谷選手のシーズン」となった。
一方で、日本国内でもプロ野球の年間王者を決める日本シリーズが佳境を迎えている。