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 メジャーリーグはドジャースがワールドシリーズを制覇した。

 スター軍団の中でも大谷翔平の存在感はひいき目なしに抜群だった。なぜ、ここまで「すごくなれる」のか?

 圧倒的なボリュームで大評判を呼んでいる前侍ジャパン監督・栗山英樹氏の新刊『監督の財産』には「監督が選手に要求すべき5つのこと」がまとめられる。

 その一つに「。をつけさせる」――どんな小さなことでも「最後までやり切らせる」――をあげるのだが、大谷翔平はそれができた選手だと書く。特別に本書より、その内容を紹介する。

頭を抱えた大谷翔平のブルペン回避

(『監督の財産』収録「1 監督のカタチ」より。執筆は2024年4月)

 一流選手はやっぱり「。」をつけるのがうまい。

 翔平はその最たる男だった。やり切ることの重要性を理解してる。一つひとつの練習、トレーニング、動き、どれを見てもそれを感じさせた。

 特にすごいのは、「今、このトレーニングをやったら調子が悪くなる」と判断すると、「やろうとしていた」ことであっても、スパッとやめる。「。」をつけることができる点だ。

 キャンプでブルペンに入る予定だった日、ほとんど投げることなく急に帰ってきたことがあった。理由を聞くと「フォームが悪すぎて、このまま続けたら悪化する」と言う。調整が遅れる懸念に加え、何より翔平が投げる日は、たくさんのメディアやファンが見に来ていて、誰もが楽しみにしていたから、「まじかよ」と監督として頭を抱えた。

 でも、選手としてはそれが正しい。

 周りの意見なんて関係ない。やるべきではない、と判断してしっかりと「。」をつけたのだ。

 はたまた、2023WBCではこんなこともあった。あの時、四番バッターとして期待していたムネ(村上宗隆)が不振を極めた。準決勝、決勝でようやく活躍したが、それ以前については全くと言っていいほど打てなかった。